令和元年度「議会改革特別委員会」行政視察報告(2019.8.5〜6)平井 登
視察先1:三重県四日市市議会(H30年度 議会改革度ランキング3位)
視察テーマ:議会改革への取り組みについて
@四日市市議会の研修内容に関する評価
四日市市議会が取り組んで来ている「議会の活性化」、「議会の透明化」対策として、特に注目したものをそれぞれ2点ずつ挙げる。
■「議会の活性化」対策として
⑴ 議員政策研究会(H17年度〜。H12年度設置「市政活性化推進等議員懇談会」が前身)
全議員が一堂に会して意見交換を行い、市政に関するさまざまな課題に対して共通認識をはかり、政策立案機能のさらなる向上に資するために設置された。
運営方法は、テーマを決め、その課題に意欲ある議員で編成する分科会方式。例年3〜4の分科会(議員は複数の分科会に所属可能)があり、課題提起者を分科会長等の中核に据えて議論を重ねる。また、案件によっては特別委員会に格上げし、執行部への政策提言に繋げている。概ね1課題について2〜3年かけた議論と政策研究を行っている。
過去の事例として、・議会基本条例分科会・市民協働促進条例分科会・総合交通政策分科会・議会改革分科会・産業振興に関する分科会・四日市公害分科会・スポーツ政策分科会・人権施策推進分科会・既存集落の維持に向けた市街化調整区域の規制緩和を目指す分科会・学校規模等適正化の現状と取組みについて全体会・市街化調整区域における土地活用の規制緩和分科会・新しい図書館を考える分科会・スポーツ振興条例分科会・公共交通のあり方を考える分科会・障害者差別解消調査研究分科会・防災対策分科会・議会のICT推進分科会・三世代家族支援条例づくりについて全体会 等々、多岐多様な分野に取り組まれていた。
なお、この議員政策研究会の位置付けであるが、議案の審査や承認等を取り扱う各常任委員会よりは下位とされている。とは言え、政策立案という議会として今後強く求められる機能・役割を重視すれば、常任委員会以上のステータスを持つものと見ることもできよう。また、同市議会のように議員期数に関係なく意欲を持った議員を分科会や特別委員会の中核リーダーに据えながら運用している点は、政策立案体制においてもっとも柔軟的且つ実効的な人材活用法であると高く評価したい。
同市における議会活性化及び議会改革の取り組みが先駆的・先進的に行える前提には、この「議員政策研究会」が大きく作用していると捉えている。
⑵ 通年議会(H23.5月議会〜)
会期を通年とすることで、議長により速やかに本会議を開くことができ、災害などの突発的な事件や緊急の行政課題に対応できることを目的としている。また、常任委員会・特別委員会の活動を活発化し、より慎重な議案審査や、より専門的な調査を行うことが可能となる。
一般的な4期に分かれる定例議会の運営方法と特別大きな変化もなく移行できることからも「通年議会」化は今後の主流になって行くと思われる。
■「議会の透明化」対策として
⑴ 市議会モニターの設置(H16.11月〜)
同市の市民自治基本条例制定の際、議会への市民参加の取り組みとして設置。地区市民センター等からの推薦に加え、広く市民から公募し、本議会を傍聴しての意見提出や意見交換会、アンケート回答等を行っている。
任期は1年だが再任は妨げないとしている(但し1年)。
モニターの人数は令和元年度の場合であるが、推薦42人、公募10人の合計52人(内前年度からの継続者16人)、平均年齢は63歳。
市議会モニターからの提言の主な内容は、「代表質問・一般質問について」、「議会運営について」、「議会広報について」、「傍聴について」等である。
議員の資質向上、議会のレベルアップには、こういった市民の監視と助言の仕組みを構築し継続することが効果的であることを四日市市議会の取り組みから伝わってくる。
⑵ 議会報告会&シティ・ミーティングの定例月議会毎の開催(H23.9月〜)
同市の市議会基本条例の三本柱の一つである「市民との情報共有」を進めるため、定例月議会毎に議会が直接地域に出向いて、議案審査における議論の経過や結果など、議会としての考え方を市民に報告する機会として開催されている。
2部構成で行われ、第1部を議会報告会、第2部をシティ・ミーティングとしているが、いずれも4つの常任委員会(総務、教育民生、産業生活、都市・環境)が二手に分かれ報告及び常任委員会別のシティ・ミーティング(意見交換会)をそれぞれテーマ設定して行っている。
特にシティ・ミーティングでは、市民から出た意見を各常任委員会で整理し、議会運営委員会において議会として協議すべき意見と各常任委員会で協議すべき意見に分けた上で、それぞれ課題に対する調査・研究を行い、その結果を次回以降の議会報告会で報告、市議会ホームページ等に掲載するなどして市民へのフィードバックを行っている。
A本市の議会改革に反映したい内容と具体例など
前項で取り上げた「通年議会」は、本市の現在の発展状況や将来性、あるいは1,100程ある全事業の点検及び円滑な推進を図る上でたいへん有効な議会運営方法になることは、通年化された他自治体議会をいくつか視察してみて確信するに至っている。
いずれの自治体議会も、“議会は市民のためにある”“議員は市民の代表である”という根本的な認識が、政党や会派を超えて議員間で強く共有されているからに他ならないと思う。
現在の藤枝市においては、北村市長をトップとした執行部のスピード感ある政策立案力とその執行体制構築力に比べて、議会の対応力が鈍く感じるのは私だけであろうか。
今回、四日市市議会から学んだ「通年議会」と「議員政策研究会」を早期に実現し、藤枝市民の期待に沿えるよう努力していかなければならないと考える。併せて、本市議会の「タウンミーティング」の回数・場数を増やすとともに、住民からの意見を整理し市政に反映させるしくみを構築する必要がある。本市議会・広報広聴委員会のより建設的、積極的な取り組みは無論のこと、「議員政策研究会」の設置は大前提になるのではないかと考える。
B その他
早稲田大学マニフェスト研究所・議会改革調査部会による「議会改革度調査2018ランキング」第3位(前年比+2)の四日市市議会は、“なぜ常にトップランクを維持しているか”を調査する機会を得ることができた。
人口311,431人(H31.4.1)、一般会計予算1,210億円(R01)、議員定数34名、議会事務局職員数18名と藤枝市を大きく上回る数値に違わない議会運営の手練・熟達度の高さは期待どおりであった。
また、快く視察を受入れいただいた四日市市議会議長・諸岡覚氏のごあいさつが印象的であった。「改革に終わりはない。絶えず一歩ずつ前進しなければならない」、「改革は見切り発車の連続だ」。
藤枝市議会歴代議長の中で、このような言葉を発した議長がいたかどうかは分からないが、変化の激しい時代にあって、二元代表制の一翼を担う市議会の責務の何たるかを鑑みれば、議会改革は、生活習慣病予防策のように議会のマンネリ化、機能不全を防ぐための健康増進運動であり、常に前進、躍動しなければならないものと思っている。
四日市市議会が伝統的に醸成してきた“改革意識の常識化”というものを、藤枝市議会でも培うべきものと痛感している。
視察先2:三重県伊賀市議会(H30年度 議会改革度ランキング21位)
視察テーマ:議会改革への取り組みについて
@伊賀市議会の研修内容に関する評価
平成30年度議会改革度ランキング21位(+48)と飛躍的にアップした同市議会の議会改革の取り組みの中で、学ぶべきことを以下3つの取り組みから述べる。
いずれも同市議会が平成19年2月28日に制定した『伊賀市議会基本条例』に基づいた取り組みであるが、同条例は逐条解説もあり遂行と検証が対比しやすい実践的な構成となっている。
❶議会報告会(H19〜、「議会基本条例・第8条」)
同市議会では、小学校区単位に設置された住民自治協議会・39区を順次対象にこの議会報告会を毎年1回実施されている。1班4人体制で、任期中は同じメンバーで班編成し、議員期数順に振り分けてバランスをとっている。
過去11年間(H19 〜H29)の延べ開催数は380回、延べ参加人数は8,214人で、平均21.61人/回の参加状況である。内容は、議会の定例会における主な議案等の報告と各地域住民との意見交換である。
課題として、議会報告会のマンネリ化、参加者の固定化、行政の御用聞き、幅広い住民との未来に向けたテーマでの意見交換会への切替えの必要性、市内全域の住民を対象とした大会場での実施、等を上げられている。これは、小学校区単位で行っていたことによる弊害とも捉えられる。そのため平成30年度からは、名称を「タウンミーティング」と改め、試行的に全市対象の大会場で開催された。市民参加者24名と議員15名が、「子育て・教育」、「地域振興」、「医療・福祉」の3つのテーマ毎に分かれて、ワークショップ形式で意見交換を試みている。さらに、令和元年度は、このタウンミーティングを本格化し、8月と翌年2月の2回実施する予定で、会場は、平成31年1月に移転した新庁舎の議場と議会フロアで実施されるようである。
❷政策討論会(H19〜、議会基本条例・第15条)
先に視察した四日市市議会の「議員政策研究会」に類する取り組みである。進め方は、提案者による説明(議題・趣旨・提言)に対し、議員による自由討議を行い、市政への反映に繋げている。平成19年から30年までの間に、20回討論会が行われ、様々な政策提言をはじめ条例制定・改正の実績も残している。
❸出前講座(H19〜、議会基本条例・第16条)
各委員会として主要な活動に位置付けられている。・総務常任委員会・教育民生常任委員会・産業建設常任委員会、さらに・議会運営委員会・広報委員会・特別委員会が取り組んでいるが、委員会以外に議会内組織でも実施可能としている。
平成19年から30年の開催実績であるが、毎年平均4つの委員会が開催し、平成30年度の場合、3つの委員会が6つの団体に出向いて、市政の課題について意見交換を行い、政策課題の収集に繋げている。上がった課題は必要に応じて政策討論会や会議規則第169条に定める協議等の場を活用し、議会内の共通認識の醸成や合意形成を図るように努められている。なお、政策立案に当たっては、その政策の実効性を高めるために、適宜、所管する当局の見解を求められている。
A本市の議会改革に反映したい内容と具体例など
まず、伊賀市議会と比較してみて、『議会基本条例』に基づいた議会運営のフレームワークが不十分ではないかと感じている。本市では、平成26年4月から基本条例を施行しているが、逐条解説がないため理念条例的なイメージ、扱いになっていないだろうか。つまり、各条項が漫然としており実効性に欠けるのではないかと思う。
条例を制定してから、5年を経過しているので検証と見直し及び改正を行い、より実効的で条例に忠実な議会運営が図られるよう求めたい。
次に、本市が「議会改革度ランキング」においてランクを後退させた要因として考えられるのは、3つの評価基準〔❶情報共有❷住民参加❸機能強化〕についての検証と改善に取り組んできていないことが挙げられる。
『議会基本条例』というバイブルとともに「議会改革度の評価基準」の3つの視点による評価・検証を常に行う必要があると考えている。逆に言えば、この3つの視点を意識した議会運営に取り組むことが結果として、議会改革であり、市民が期待する議会運営そのものになるのではないか。
この点については、議会運営委員会の責務であり、議会改革特別委員会がその検証役を果たさなければならないと考える。よりシステマチックな体制づくりが求められている、と思う。
Bその他
平成26年に、広報広聴委員会の一員として、伊賀市議会を視察している。当時の市庁舎は、市の中心にある伊賀上野城の近くに在ったが、老朽化が著しかったため本年1月に旧庁舎から南東に3q程離れた郊外に新築移転していた。
伊賀忍者の里をイメージさせる黒を基調とした外観及び内部の色合いや手裏剣型の案内標示等、たいへん個性的な庁舎には地方自治体の活力が感じられ好感が持てた。総工費約60億円ということだが、いずれ本市も新庁舎の建設が取り沙汰されてくると考える。藤枝市らしい、新庁舎建設に向けて議会も早めの対応をされた方がよろしいのではないか。それについても、やはり議会改革への積極的な姿勢を示さない限り、市民の目線は冷ややかではなかろうか。
本市議会が一丸となって議会改革を進めるためには、まず意識改革が必要で、会派、党派を超えた全議員による政策研究会ないし政策討論会という自由討議、政策立案の仕組みが不可欠であることを、今回の四日市市議会、伊賀市議会の視察から学び得ることができた。