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■議会改革特別委員会・行政視察報告(2018.10.18〜19) 委員:平井 登

■議会改革特別委員会・行政視察報告(平成30年10月18日・19日)
那須塩原市議会との意見交換

那須塩原市議会との意見交換

北上市議会との意見交換

北上市議会との意見交換

視察先1:栃木県那須塩原市議会(議会改革度ランキング20位)

研修テーマ:議会改革への取り組みについて、予算、決算審査方法について、議会基本条例の見直し等の取り組み

@那須塩原市議会の研修内容に関する評価
 平成17年1月1日に1市2町の合併により誕生した那須塩原市は、首都圏から約150qの栃木県北部に位置している。人口は116,278人、世帯数が46,804世帯(平成30年4月1日現在)、面積は592.74㎢あり、全国有数の酪農と温泉資源をはじめとして多彩な産業が立地する自然豊かな高原都市である。
 合併による在任特例時の議員定数は、旧黒磯市23人、旧西那須野町21人、旧塩原町18人の合計62人であったが、同年5月の選挙で32人とし、任期満了後の21年には30人、さらに25年から現在は26人へと定数を漸減させている。なお、29年5月1日における会派数は、2人以上会派が6つ、1人会派が3つ、合わせて9会派に分かれている。
 常任委員会は、総務企画(9人)、福祉教育(9人)、建設経済(8人)、そして予算(26人)の4つを2年任期の常任委員会としている。

 予算、決算審査方法についてであるが、予算常任委員会は、平成26年12月定例会より、事務の効率化及び地方自治法改正による「常任委員会への所属制限の廃止」を受け、これまでの予算等審査特別委員会を『委員会条例』第2条に基づく「予算常任委員会」に変更し、全議員が委員として予算及び補正予算を審査している。また、決算審査については、監査委員を除く全議員が委員となる「決算審査特別委員会」で行われている。
 審査体制は、3常任委員会(総務企画・福祉教育・建設経済)をそれぞれ3分科会としており、総務企画常任委員長が予算常任委員長、決算委員長を務めている。
 審査の流れであるが、本会議前に「予算(決算)全体会」を開催し、分割付託された予算議案(決算議案)ごとに審査し、結果について分科会会長が報告を行った後、本会議で、議案ごとの質疑→討論→採決を行うようになっている。この分科会方式による審査の長所は、常任委員会に分割付託するという点で専門性ある審議が可能なことにある。しかし、この方法は、予算(決算)案を複数の常任委員会に分割付託することを不可とした行政実例「1つの議案を分割して審議することはできないものと解する」、「予算は不可分であり、委員会としての最終的審査は1つの委員会において行うべく、2つ以上の委員会で分割審査すべきではない」(昭和29年9月3日自治庁行政部行政課)に反することになるが、全国の自治体の多くが採っている方法でもある。

A本市の議会改革に反映したい内容と具体例など
 那須塩原市議会における議会改革の取り組みの中で、本市議会でも是非取り組んでいただきたいのが、まず、「議長・副議長選挙における所信表明会」の導入である。これを設定する場は、公職選挙法に抵触しないよう配慮されていたが、5月定例議会の本会議における暫時休憩中であり、しかも質疑を行う徹底ぶりで当初は4時間を費やしたという。本会議はインターネット中継されているため、市民だれもが議長・副議長候補者の考えや方針、資質等を確認でき、その投票状況についても生中継で視聴できる透明性は、開かれた議会実現のための基本中の基本ではないだろうか。
 次に、同市議会が平成24年3月議会において制定した『議会基本条例』について、同条例の第21条「議会は、必要に応じて、この条例の目的が達成されているかどうか検証し、必要と認められる場合は、適切な措置を講じるものとする」に基づき、29年7月から議会基本条例の検証に取り組んでいることは、たいへん参考になる。
 その検証方法は、@事前準備→A検証チェックシートによる自己評価→BPDCAサイクルシートによる目標・成果・改善点の整理→C第三者による外部評価→D検証作業のまとめ及び検証資料の公表まで、の5工程となっている。その上で、検証から見えた今後の取り組み事項をまとめ、議会全体で取り組むよう働きかけているなど、客観性と公開性、さらに実効性の高い検証作業であると評価できよう。
 本市が26年4月から施行している『藤枝市議会基本条例』は、5年目になっていることから、同条例第23条「市議会は、市民の意見、社会情勢の変化等を踏まえ、必要に応じてこの条例の見直しを行います」に従い、基本条例の検証作業に取り組むことを望みたい。

Bその他
 那須塩原市議会の議会報告会については、平成24年8月からスタートしており、以降年2回のペースで行われている。当初は4班に分かれていたが、議員定数の削減に伴い現在は、3班体制(常任委員会ごと)で実施されている。26年11月の議会報告会から、意見交換のテーマを会場ごとに、地域の実情に即したテーマを設定されていたようだが、翌27年11月からは、各会場共通のテーマとし、市政の課題を焦点化しながら住民の意見集約を図っている。そして、29年度からは、3つの班それぞれにおいて、各常任委員会の所管する分野に関するテーマを1つずつ定め、30年度までの2年間を通じて扱うものとして取り組まれている。その具体的なテーマは、「公共交通のあり方」、「自治会の未来を考える」、「数字からみる協働のまち」、「子どもの未来のために」、「空き家等の対策について」などであるが、このような共通テーマによって集められた市民の意見は、議会としても政策提言に活かせ、市政に反映しやすいものと評価できる。なお、同市議会では、意見交換時に、より多くの方から意見を出しやすくするために、学校方式の対面型ではなく、車座によるワークショップ型で行うなどの工夫もされている。さらに、公民館(地区交流センター)での報告会ばかりでなく、様々な団体へ出向いて行くことも本年11月から実施するようである。
  
 藤枝市議会の2017年度議会改革度ランキングは全国1,318議会中76位で、県内1番になってはいるが、評価基準となる3つの柱〈@情報共有、A住民参加、B議会機能強化〉の内、議会報告会(タウンミーティング)に代表されるA住民参加の面において、改善の必要性が指摘できる。今後さらなるランクアップを目指すには、タウンミーティングの回数(現在、年1回)を増やしたり、テーマを決めたり、各種団体との意見交換に努めるなど、より多くの市民から意見を引き出す工夫や政策提言に繋げる創出力と立案力の向上を推進しなければならないと感じている。

視察先2:岩手県北上市議会(議会改革度ランキング32位)

研修テーマ:議会改革への取り組みについて、予算、決算審査方法について、通年議会について

@北上市議会の研修内容に関する評価
 平成3年4月1日に、1市1町1村の合併により誕生した北上市は、岩手県の中央部、北上盆地の中程に位置している。人口は、92,625人(平成30年8月末現在)、世帯数が約36,550世帯、面積は、437.55㎢あり、北上川と和賀川が合流する肥沃な土地に美しい田園地帯が広がっている。
 農業、畜産業はもとより、岩手県内でもっとも早くから工業団地造成や企業誘致に取り組んできた結果、半導体や自動車をはじめ幅広い業種が集積するテクノポリス都市として発展する農・工・商のバランスがとれたまちである。
 北上市議会の議員定数は、24年4月から26人である。現在、4つの会派に議員19人(政党無所属18人、民進党1人)、会派に属さない3つの政党に議員6人〈社会民主党(2人)、日本共産党(2人)、公明党(2人) 〉、会派にも政党にも属さない議員が1人の合計26人となっている。
 常任委員会は、総務(9人)、教育民生(8人)、産業建設(8人)の3つで任期2年である。
 予算、決算審査方法は、予算特別委員会、決算特別委員会を、議長を除く25人の議員で構成し、審査時に設置している。審査の流れは、那須塩原市議会と同様であるが、常任委員会ごとの3つの分科会に分かれ、それぞれが所管する予算、決算について審査。各分科会の委員長(正副委員長は互選)は、全体会で審査結果を報告し、その審査結果を受けて最終日の全体会で、討論及び採決を行っている。
 同市議会では、この予算、決算審査における議案分割付託の適否について、全国の自治体議会で問題視している「常任委員会等への分割付託は議案一体の原則に反する」ということを認識しつつも、やはり多くの地方議会で採られていることを正当として継続されている。

A本市の議会改革に反映したい内容と具体例など
 北上市議会の議会改革の取り組みとして、たいへん参考になったのは、「通年議会」の導入とそのプロセスである。平成24年8月に「議会改革推進会議」を設置したところ、全国の先進議会で取り組んでいる通年議会が話題となり、翌25年5月の同推進会議で、その導入に向けた検討に入ることを決定している。そして、同年8月から翌26年3月までの同推進会議での検討の結果、通年議会を実施すべきと議長に報告。その後は、議会運営委員会において、通年会期制の具体の中身を検討。それを踏まえて、同年11月の全員協議会で説明、12月には通年議会制導入の協議を市長に申し入れ、翌27年1月、市当局への説明会(部課長級職員を対象)を開催している。
 導入に当たって懸念される専決処分の取り扱いや議会の閉会期間が年度末から年度初め(3月20日頃〜4月10日頃)生じること等について、当局と協議・調整を重ねた結果、同年8月、市長から通年議会導入に同意する旨の回答を受理。それを受け、議会運営委員会及び全員協議会において、通年議会の導入に必要な条例、例規等を定例会に上程するための準備を進める。そして、上程された8月の本会議において、関係する全議案が可決され、通年議会がスタート。平成28年4月の改選後の初議会から本格化されている。
 通年議会導入の効果は、主に3つあるという。まずは、議会活動が年間を通じて行えることで常任委員会の活動が活発化、これまで以上に調査・研究が盛んとなり議会側からの政策的提言が増えたこと。次に、市民などからの請願・陳情に速やかに所管の常任委員会で審査を行うことができるようになったこと。そして、なんといっても議会の意思による議会開催が可能となったことである。これまで、国への意見書の提出や議会側が提案する議案は、市長が招集する定例会や臨時会で、市当局が提出した議案と合わせて提案されてきた。これは、議会側に議会を開く権限がなかったためであるが、通年議会の導入により、時宜を逸しない速やかな議会開催が実現できるようになった。

 同市議会の視察の中で、本市の某議員が通年議会によるデメリットはないか端的に議長に伺ったところ、「まったくない」と明快なお答えを頂いたことも印象的であった。
 本市議会においても、「通年会期制」のメリットをさらに深く研究・検討し、市民サービスの向上と市政の発展に直結させられるよう前向きに取り組んで行くべきと思っている。あわせて、議員の意識改革と議員報酬を含む処遇改善等により、本市議会が活性化して行くのであれば、大きなメリットと言えるのではないだろうか。

Bその他
 北上市議会の「通年議会」導入により、常任委員会の調査に基づく「政策提言力」が、極めてハイレベルであることに感銘を受けている。本市議会の総花的で具体性に欠けるような提言書と比較した場合、その違いは歴然である。
北上市議会の提言書は、1つの事業について、@調査に基づく現状把握→A市民の意識調査と意見交換→B他自治体の取り組み視察・調査→Cそれら@ABを踏まえた分析と課題の整理→D具体策を系列的に明示した提言、といった構成になっており、たいへん論理的で説得力のある、コンサル会社顔負けの政策立案体系に基づいていた。
 また、同市議会では、平成29年度に4件の政策提言をされているが、提言までの工程に2年をかけていることも当局を圧倒する、あるいは信頼を得る底力になっていると高く評価したい。
 藤枝市議会においても、「通年議会」導入についておおいに学び研究し、常任委員会のあり方、会派のあり方等について、さらなる改革・改善を推し進めていけるよう、鋭意努力しなければならないと痛感している。