滋賀県野洲市議会・京都府長岡京市議会の議会改革の取り組み
■滋賀県野洲市議会の議会改革の取り組みについて
●取り組みの経緯・内容
同市では、議会の公平性・透明性を確保し、市民に開かれた議会と市民参加をめざすために議会改革に取り組まれている。平成22年2月に、任意の研究会である「議会改革推進研究会」を立ち上げて「議会基本条例」の素案を作り、同年6月の定例会において「議会改革特別委員会」を設置。現状の議会運営全般の検証を行った。
『議会基本条例』案の軸足は、「市民と議会の関係」「議会と行政の関係」とし、市民説明会やパブリックコメントを実施しながら条例案を修正、平成22年9月定例会で「野洲市議会基本条例」を制定、翌3年4月1日から施行している。
基本条例に則る議会改革の主な取り組み事例として、〇議会報告会・懇談会の開催 〇正副議長選挙所信表明会の開催 〇委員会の公開 〇本会議のインターネット配信 〇政務活動費の常時公開 〇「野洲市空き家の適正管理に関する条例」を議員発議で制定 〇出前懇談会の開始 〇防災対策研究会設置と「野洲市議会大規模災害対応規定」制定 〇通年議会の調査研究 〇議会報告会と懇談会の見直し 〇議員定数、議員報酬の調査研究、等々を挙げられる。
●今後の課題
大きく3つの課題を挙げられている。
1点目は、「議員定数と報酬」についてである。野洲市の人口は、約51,000人であるが、議員定数は20人(現員数19人)である。全国的な議員定数削減傾向のある中で、やや多いと捉えられていて、29年11月議会で定数18人とする一方、報酬を+5万円にする方向である。
2点目は、「議員の政策立案能力の向上」であるという。議会改革の一環として、平成23年から実施している「議会報告会・議会懇談会」への市民参加者数の減少傾向の中で、これまでの定期開催を廃止し、名称も「市民懇談会」「出前懇談会」に区分けて、いずれも必要に応じて開催する方法としている。その積極的な取り組みから得られる市民の意見や要望、請願等をどのように政策反映して行くか、を課題とされている。
3点目は、「議会基本条例」の定期的な検証を挙げられている。その検証ポイントとして、●行政の事務執行の監視強化 ●議会からの政策立案・提案の充実 ●議会が有する情報の公開および説明責任 ●議員による政策討論会や議会報告会の開催 ●議会の透明性の確保 以上5つの視点で現行の議会活動をチェックしなければならない、と考えられている。
●本市に反映できると思われる点
本市においては、野洲市より3年遅れの平成26年4月1日から『議会基本条例』を施行している。第1章・第1条から第10章・第23条まで、バランスよく議会のあり方、役割、責務等が網羅されている。しかし、条例に則る運営や役割、責務が果たされているのか検証および評価する時期にある。野洲市では、施行2年後の25年4月に、これまでの議会改革の取り組みの検証として、基本条例の見直し、報告会・懇談会の充実、新たに議会の防災対策の検討等に入った結果、より開かれた透明性のある議会運営のために「出前懇談会」の開始や「野洲市議会大規模災害対策規定」の制定、通年議会の調査研究、議会議員政策立案研修会の開催等々、積極的に取り組まれている。議員定数の割に、会派数が無会派2人を含め6会派と多いことも改革に積極的となる議会環境があるものと感じた。
■京都府長岡京市議会の議会改革の取り組みについて
●取り組みの経緯・内容
同市では平成22年6月議会において、市民からの請願を受けた「長岡京市議会基本条例の制定を求める請願」を全会一致で採択している。そして、これまでも進めてきた議会改革を踏まえて「議会基本条例の制定」を議員提案で行い、平成24年3月23日に全会一致で可決されている。また条例では、「議会は、その機能を発展させるため議会改革に取り組み、既存の制度や運営の方法等について、議会運営委員会において不断の見直しへ向けた取り組みを推進します」とし、本条例の理念を具現化して行くため「情報発信」「市民参加」「議会活動」の3つを柱とした議会改革検討項目(23項目)について鋭意検討して行くと述べている。
それは、@答弁に必要な範囲での反問権付与 A委員会運営での議員間自由討議の場の設定等 B一般質問の方法 C「議会だより」の議員名記入と会派別議案賛否の記載 D議員の個人情報等の選択的公開 E傍聴者の資料閲覧可能化 F市民との意見交換会設定 G本会議と委員会のインターネット動画配信 H本会議場のバリアフリー化(傍聴席に限りがあるため別室で生中継を見る)I請願、陳情での押印の省略(直筆署名を有効化) J請願者、陳情者の委員会での趣旨説明 K本会議と委員会の傍聴自由化 L各委員会議事録のHP公開 M議会議事録の早期発行化 N地方自治法233条5項との関係で提出書類の検討 O議会の議決事項の検討(第9条) P通年議会の検討 Q議会改革項目と審議状況の議会HPへの掲載 R会派構成人数 S議員定数のあり方と議員報酬について ㉑政務活動費の額と個人使用枠の創設 ㉒議会事務局の機能強化 ㉓速記廃止。
以上であるが、それらの検討の進捗状況は同市議会ホームページで随時更新されている点は特筆したい。
●今後の課題
「予算審議の流れ」についての本市議会からの質問が活発であった。本市議会とは手法を異にするためである。長岡京市議会では、議員全員が「予算審査常任委員会」委員となり、それを分科会(=3常任委員会)に分けて質疑、その後、小委員会(会派からの選出委員)で総括質疑し、さらに全体会で討論・採決が行われた上で、最後に本会議に報告されて採決する。といった流れになっているが、どこか理解し難いところもあった。この点は、本市「予算特別委員会」の手法に学ぶ点もあると感じた。
●本市に反映できると思われる点
本市においては、長岡京市のように23項目といった具体的な議会改革の検討項目は設定しておらず、場当たり的な提言や意見による改革検討になっているのではないだろうか。そのため、全会を挙げた積極的な議会改革への姿勢には乏しく、議員個々のモチベーションも決して高くないように感じてしまう。長岡京市のように検討項目設定およびその進捗状況をインターネットで随時公開すれば、市民の関心や議会への期待も高まり、議員の資質向上、スキルアップにも繋がるのではないだろうか。
また、長岡京市においては、議員定数21人でありながら7つもの会派があり、特に共産党会派が最大会派であることも議会の活性化に相当の影響をあたえていると感じた。各会派が互いに切磋琢磨し合いながら、議会改革に取り組まれていることは大変参考になった。