NPO法人多摩住民自治研究所「よくわかる市町村財政講座」
講師:大和田 一紘 氏
1 今回の研修の目的
@地方交付税制度を学ぶ
A歳出の仕組みを学び、行財政改革の理解を深める
2 研修参加に際し準備した主な資料等
・決算カード(平成13年度〜平成25年度)
・総務省提出の総括表@〜C
・平成26年度決算統計の「背番号33 地方債現在高の状況」
・平成25年度「類似団体比較カード」
・地方交付税算定台帳(総括部分・表の2枚)
・テキスト「習うより慣れろの市町村財政分析」(大和田一紘 著)
3 研修内容
(1)財政情報の電子化の展開
第二次の段階(市民による財政分析)に入っている。総務省の決算カードを閲覧し、経年的に見たり、類似団体と比べることにより財政上の特徴や問題点を明らかにする。
財政健全化法〜4種の財政指標(実質赤字比率・連結実質赤字比率・実質公債費比率・将来負担比率)の導入〜売却可能資産を明らかにする。
(2)住民がまちの財政を学ぶ「心の準備」
限られた財源の使い方は適切か。役所任せにしない。
(3)今日の市町村財政危機や悪化の原因
バブル経済崩壊後の政策不在やリーマンショックを受けてなど。
(4)どこにどんな資料があれば自治体の財政がわかるのか
決算書、財政状況資料集などの説明(レジュメ参照)
(5)どのようにすれば自治体の財政がわかり、市民が太刀打ちできるのか
・経年的な視点で広報等の資料を読み取る努力が大切である。
・類似団体との比較等を行う。
(6)決算カードとはなにか
ホームページを通して、2001年度(平成13年度)以降の開示
(7)自治体の『決算概況』(決算カード)からわかること
用語の解説については、レジュメを参照
財政力指数、経常収支比率、実質公債費比率、将来負担比率 等
(8)財政健全化の手掛かりに類似団体比較カードを使う意味
財政運営の堅実性、財政構造の弾力性、行政水準の向上や確保
(住民に十分に分かりやすく公開できているか。)
(9)「平成25年度 財政状況資料集」の読み方〜実質公債費比率等
各ページの説明、分析表の読み方について、限られた時間での説明であった。
【1】歳入の仕組み
1 国と地方自治体の仕事及び財政の関係
レジュメを参照
2 一般会計と特別会計
特別会計をやみくもに設けることの危険性。繰入金・繰出金の説明。
3 歳入の仕組み
適切な税収の確保
4 歳入のあらまし
レジュメ参照
5 歳入構造の分析
・一般財源と特定財源
・自主財源と依存財源
6 地方交付税算定のしくみ
・2007年度の地方交付税大改訂
・地方交付税の計算方法
・基準財政需要額と基準財政収入額
・基準財政需要額の算定方法(自治体の人口や面積等基礎数値の説明)
【2】歳出の仕組み
1 歳出の分析とその方法
レジュメ参照
2 歳出の仕組みを診断する上での基礎的分類
・目的別歳出と性質別歳出
・目的別経費の性質的な構成をクロス分析して、検証することが大切である。
3 経常的経費と投資的経費
・経常的経費中の物件費に賃金や委託料が含まれていることに注目。
【3】これからの財政運営と財政民主主義の課題
〜失われた20年(バブル崩壊後)と21世紀の転換〜
1 今後の財政運営
・投資的経費型財政 → 環境・福祉・教育型財政へ
・必需的サービス → 選択的サービス → ストックマネジメント
アセットマネジメント
「わかりやすくわがまちの財政を伝える意味とその方法」 講師 石山 雄貴 氏
1 自治基本条例と自治体広報のあり方
(1)自治基本条例の策定の広がり
・ニセコ町のまちづくり基本条例の紹介
(まちづくりの基本原則、議会の役割と責務、財政)
(2)自治基本条例の策定の広がり
・市民財政白書の作成に議員が参加、議会のチェック機能は
(3)自治体広報のあり方について
・財政について、分かりやすく伝えているか。
・経年的な説明があるか。類似団体との比較はなされているか。
(4)いま曲がり角に来ている広報
・一方通行のお知らせ型 → 対話型(コミュニケーション型)へ
・報道的要素がない。 → 住民に加わってもらい問の形式に
・ネガティブな情報が載らない。(訴えが弱い)
・市民的な視点に欠ける。(真実が書かれているか。)
2 加速化する地方創生
レジュメ参照
おわりに(感想等)
以上の流れで2日間の講義を受講しました。大和田先生の講義は、必ずしもレジュメ通りには進まず、あちらこちらに飛躍するので理解するのに苦労しました。講義の中で、何度となく分析表への記入作業を確認しました。私には、この作業が不慣れなため、時間が掛かり、とても苦痛に感じました。そして決算カード等にある用語の意味を理解するためには、自分が身を持って体験することが必要であると感じました。これは一度に身につくものではないので、今後何度も繰り返し学習しなければなりません。そして今回、特に地方交付税の制度について勉強させていただき、たいへん有意義な研修となりました。
今回の講義の中で印象に残ったことが二つあります。一つは市の広報について、現在の内容は充分なのかと考えさせられました。財政状況について、市民に対しポイントを明確に伝えているのだろうか。どれだけ多くの人に読まれ、理解されているのだろうか。そして、もう一つ気になったこととして、臨時財政対策債があります。実は議員になって最初の決算時に、先輩議員に質問したところ、簡単に「それは臨財債だから問題ないよ」というあっさりとした返答だったので、それ以上考えませんでした。しかし今回の研修を受講し、これについてもっと研究し、深く掘り下げてみたいと思うようになりました。臨時財政対策債のしくみと、これを将来にわたって各地方公共団体がどのように考え対処していったらよいのかを研究します。藤枝市も多くの他団体と同様に、臨時財政対策債は毎年増加傾向にあるので(確か地方債の50%位?)、しっかりとした考えを持って取り組まなければならないと思います。
財政の学習については、今後も予算、決算の機会を通して、自らの大切な研修の機会ととらえ、自己研さんに努めさせていただきます。今回は貴重な体験をさせていただき、関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。
(文責: 遠藤久仁雄)