■視察先:愛知県大府市/滋賀県大津市立市民病院 (R2.1.27〜28)
視察先1 愛知県大府市・福祉子ども部
視察テーマ:認知症対策と『認知症に対する不安のないまちづくり推進条例』について
@ 取り組みの経緯・内容
・平成19年12月7日、JR東海道本線共和駅(大府市)で91歳の男性=認知症患者(要介護4・認知症高齢者自立度W)が線路に立ち入り、走行してきた列車に跳ねられ死亡する事故が発生。同市において、認知症への対策が急がれる。
・平成21年、国の認知症地域支援体制構築等推進事業を受け、愛知県認知症地域資源活用モデル事業(認知症サポーター、キャラバンメイトの養成、見守りマップ作成、行方不明者捜索訓練、市民フォーラムの開催、メルマガ配信開始等)に取り組む。
・平成23年、同市にある国立長寿医療研究センターが認知症疾患医療センターに指定されたことに伴い「認知症地域支援推進員」を設置する。
・平成26年、在宅医療介護連携拠点推進事業実施(認知症WGの設置)
・平成27年、認知症総合支援事業実施(認知症地域支援推進員、嘱託医の設置、ネットワーク会議の設置等)、認知症不安ゼロ作戦開始。
・平成28年、認知症介護家族支援事業、認知症カフェ登録事業開始。
・平成29年、『大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例』制定
・平成30年、認知症初期集中支援事業開始、見守りネットワーク拡充、認知症サポーター養成2万人チャレンジ、徘徊言い換え(「ひとり歩き」「ひとりで外出する」等)、本人ミーティングの開始
以上が大まかな対策の経緯であるが、興味深かった施策をいくつか挙げる。
❶認知症サポーター2万人チャレンジ:認知症に対する正しい理解と支援を普及啓発する取り組みで、これまでの養成講座受講者数累計は14,042人(令和元年9月現在)。
❷認知症地域支援推進員の設置:認知症に関する相談及び支援のコーディネート、医療や介護等の関係機関及び地域との連携強化等を主な活動とし、具体的には、初期集中支援チーム員会議への参加、認知症カフェの運営支援、認知症介護家族交流会への参加、本人ミーティングの企画運営、認知症サポーター養成講座講師、広報等での啓発活動を行っている。
❸認知症高齢者等個人賠償責任保険事業:共和駅での認知症患者死亡事故の教訓からと思われるが、認知症の方が起こした日常生活における偶然の事故により、第三者の身体や財物に損害を与えたことで生じる法律上の賠償責任を負う場合に被る損害を補償する「個人賠償責任保険」に、大府市が契約者として加入するもので、最大1億円の補償。保険料は年額1,620円/人(市民の自己負担なし)。対象者は、見守りネットワークに登録した認知症の方(疑いや若年性の方含む)。
A 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
本市においても国の事業(新オレンジプラン)と連動する様々な認知症施策に取り組んでいるが、大府市の「認知症高齢者等個人賠償責任保険事業」は介護者、家族にとって、予測不能の徘徊等による第三者への損害補償を市が契約者になってくれることはとてもありがたいことだと思う。保険料も安く、本市でも採用していただきたい事業である。
視察先2 滋賀県大津市 独立行政法人・市立大津市民病院
指圧テーマ 緩和ケア病棟及びダヴィンチ導入による病院経営への効果等について
@ 取り組みの経緯・内容
⑴緩和ケア病棟について
・悪性腫瘍と後天性免疫不全症候群に限定し、抗がん剤や手術などのがん自体に対する治療は行わず、器械などによる延命のための処置も行わないで終末を過ごす患者さんとご家族に応える病棟として、平成11年4月に開設。
・身体や心の痛み、その他の苦痛を和らげ、その人らしい生涯を、尊厳をもって全うできるように工夫された環境とチーム(専従医師、看護師、公認心理師等)により、24時間体制で患者さんとご家族を支援。
・病室は、同病院の9階にあってすべて琵琶湖に面し、心安らぐ風景が見られる。
・病室料金:2人部屋3室(室料なし)、個室13室(1日:7,000円税別)、特別室1室(1日:15,000円税別)
・患者さんに少しでも心地よく、楽しく過ごしていただけるよう音楽療法やアロマセラピーなどの代替療法を取り入れている。
・食欲がなくても飲みやすく調理された辰巳芳子先生の「いのちのスープ」サービスを週一回行っている。
・ご家族の休憩や宿泊ができる和風の部屋を設けている。
⑵ダ・ヴィンチ導入について
・同病院は、患者さんの負担が少ない鏡視下手術を得意としており、泌尿器科領域及び消化器外科領域において、内視鏡手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ』による支援手術を平成26年4月に導入し6月から稼働させている。
・平成30年4月、「高度鏡視下手術トレーニングセンター」を設立し、さらに安全かつ低侵襲で治療効果の優れた鏡視下手術を実施できる医師の育成を図っている。具体的には鉗子を使って@ゴム輪受け渡しAガーゼ切抜きB針糸誘導C体腔内結紮などを行い、ダ・ヴィンチの操作ピット(サージョンコンソール)での動作訓練を行っている。
・ダ・ヴィンチの運用に当たっては、「安全第一、指導者が必要=ロボットは力が強いので誤操作は致命的損傷になるため」、「泌尿器科の常勤医師が4人いる=手術に3人必要なため」、「鉗子はケチらない=様々な手術に対応できるよう豊富に揃える必要がある」など、ダ・ヴィンチの特長や患者さんにとってのメリットをはじめとして導入における注意点や経営上の投資効率などが理解できた。
A 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
⑴緩和ケア病棟については、本市でも総合病院の未使用病棟を令和3年度より緩和ケア病棟にする計画が立てられている。大津市立病院等を参考に、終末期の患者さんとご家族の支援に尽くしていただきたい。
⑵ダ・ヴィンチ導入に当たっては、担当医の確保と研修・訓練が重要なことが分かった。また、若い医師にとってダ・ヴィンチの存在は魅力であることから医師確保に寄与する可能性もあると思う。ただ、「地域がん診療連携拠点病院」としては、やや出遅れた導入となる上、必ずしも収支向上に繋がるものではないことも知る必要がある。