■令和元年度上期「健康福祉委員会」行政視察報告(委員:平井 登)
視察先1:東京都東大和市
視察テーマ:日本一子育てしやすいまちづくりへの取組について
@取組の経緯・内容
⑴ 東大和市の保育をとりまく状況
・東京都区市部で唯一、2014〜2016年の3年間での平均出生率が1.5を超えている。
・面積は約13.4㎢で、その内約1/4を多摩湖が占め自然環境に恵まれている。
・都心へのアクセスが良くベッドタウンとして発展、人口増加傾向を維持している。
・認可保育所(公立1・私立15)、認定こども園2、小規模保育5、家庭的保育2の
合計25園で整備率は55,34%、待機児童数48人。 ※平成31年4月1日現在
⑵ 東大和市の子ども・子育ての取組施策
●待機児童ゼロを目指して
・既存保育園の建替えによる定員の拡大(施設整備補助金の補助額の増額)。
・弾力運用による受け入れ人数の拡大。
●保育士の確保策として(潜在保育士対策)
・保育士の処遇改善費助成(市単)として、@8,400円/月。また、勤務年数・評価による賃金改善補助あり。
・保育士宿舎借上げ補助として、市内の賃貸住宅を法人が借上げて保育士の宿舎として活用する場合の補助、@71,750円/月。
・駐車場補助(市単)として、自家用車で通勤する保育士の駐車場経費@5,000円/月。
・保育士採用推進助成金として、保育園が人材派遣会社から保育士紹介を受ける場合の費用の半分を補助。
・保育のおしごと説明相談会の開催(6月・11月年2回)。同一会場にて法人ごとにブースを設置し各園のPR説明や相談対応を実施。
●特色ある子ども・子育ての施策
・病児・病後児保育室のお迎えサービスとして、お子さんが体調不良になった時、保護者に代わってタクシー(運賃は保護者負担)で保育所等に迎えに行き病児・病後保育室で預かる事業(保育料:市内の方1日2,000円、市外の方1日4,000円)。
・訪問看護師派遣委託として、医療ケアが必要な乳幼児が保育園等で安全安心な保育が行えるよう訪問看護ステーションから看護師等を派遣する事業。
・休日保育(日曜・祝日)、年末保育(12月29日・30日)を実施し、就労形態の変化に対応。
・ランドセル来館事業(学童保育の補完事業)として、全ての児童を対象。受入施設は、小学校の余裕教室や児童館で、放課後に居場所のない児童がいないよう対応。
・発達に不安や心配を抱えている家庭のフォロー。双子や三つ子のお子さんと保護者を対象とした育児相談会、情報交換会の開催。高齢出産家庭のフォロー等を実施。
A 今後の課題
●待機児童解消とその後を見据えた展開
・都有地を活用した保育園の新規開園(乳児中心に定員拡大)。
・認可幼稚園の認定こども園化(幼稚園の存続)。
・公共施設の全体的な再編を見据えた公立保育園の今後の方向性(職員の高齢化・園舎の老朽化)。
・私立保育園長会との連携・協力と「顔の見える」良好な関係づくり。
●保育従事者確保対策
・保育のおしごと説明相談会の開催(6月・11月の年2回開催)。
・保育士処遇改善(金銭面での給付は限界・職場環境の改善)。
●幼児教育の無償化
・保育料無償化による利用者の動向に注視。
・多子世帯に有利な軽減策の充実。
●東大和市ならではの取組み
・市制50周年と合わせた「子ども・子育て憲章」の制定。
・子どもの貧困や青少年支援を視野に入れた『子ども・子育て総合計画』の策定。
B 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
・保育士確保対策(市単)の給与改善や賃貸住宅、駐車場経費の補助など実効的施策。
・保育のおしごと説明相談会の開催(6月・11月の年2回開催)。
・病児・病後児保育室のお迎えサービス(小児科クリニックとの連携)。
・訪問看護師派遣委託。
視察先2:東京都世田谷区・国立成育医療研究センター内「もみじの家」
視察テーマ:医療型短期入所施設「もみじの家」の取組みについて
@ 取り組みの経緯・内容
日進月歩する医療により、重い病気があっても生命は救える一方で、退院後も人工呼吸管理や痰の吸引など様々な医療的ケアが必要な子どもは年々増え続けており、現在全国に1万9,000人以上いると言われている。
自宅で24時間365日続くケアは、家族の重い負担となり、保育所や幼稚園、学校での受け入れは限定的なことから、重い病気を抱える子どもと家族は地域の中で孤立してしまう状況にもある。たとえ、重い病気や障害があっても子どもには子どもらしいひとときが、家族には安心とくつろぎのひとときが必要ではないか。
『もみじの家』は、医療的ケアが必要な子どもと家族が数日間滞在できる短期入所施設として、2016年に国立成育医療研究センターが創設。重い病気や障害を持つ子どもたちが、同世代の友だちと遊んだり、学んだり、普段はなかなかできないことを経験できると同時に、家族がすべてのケアをスタッフに任せつつ、自由な時間の中で心身ともに休息することができることを目的としている。
◆『もみじの家』の概要
理念 重い病気を持つ子どもと家族のひとり一人が、その人らしく生きることができる社会を創る。
ミッション 重い病気を持つ子どもと家族に対する新しい支援の仕組みを研究開発し、全国に広める。
〇対象者:主に医療的ケア児(0歳〜19歳未満)
・重症心身障害児で障害福祉サービスの短期入所支給決定を受けている
・身体障害者手帳の肢体不自由1級か2級を所持
〇ベッド数:11(個室5・3人部屋2)
〇ケアスタッフ:看護師15名、保育士2名、介護福祉士1名
〇利用期間:一回最長9泊10日(原則、毎月利用可能)
〇利用料:障害福祉サービス費の原則1割負担
〔個室〕1日3,000円〜4,000円 〔3人室〕1日2,000円
食費・1食640円 その他・付き添いの寝具代金1泊500円
*平成30年度の収支実績 総額 約1億9千2百万円
収入(障害福祉サービス費等63%・行政〈東京都、世田谷区、川崎市等〉からの
補助金等22%・利用料金等5%・寄附金10%)
支出(給与費81%・委託費11%・経費6%・設備関係費1%・材料費1%)
A 今後の課題
・開設以降年々登録者数が増え続けていて、2019年3月31日現在の延べ登録者数は、619人(診療カルテのある成育受信者が61%、ドクター診察の必要な成育以外受信者が39%)と多く、成育以外に通院している子どもは、新たな登録のためには3年待ちの状態である。なお、退所等による登録解除数は120人。
・登録者の都道府県別内訳は、東京都が79%、神奈川県14%、埼玉県4%、千葉県2%、その他(静岡県2人、栃木県1人、茨木県1人、山形県1人、愛知県1人)1%、となっており、全国的に同様の施設が極めて不足していること分かる。
・申込者数が多いため、毎月30〜40名以上の利用希望を断ることが常態化している。
・利用申込者のキャンセル(体調の不良等が理由)が年間平均25%と高く、経営面で苦慮している。
B 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
本市及び近隣市町には、『もみじの家』のように子ども病院と隣接した施設はない。
しかし、重症心身障害児は県内でも増加傾向にあるため、今後を見据えたとき、国が主体となり、県単位での施設整備をするべきと強く感じた。また、資金調達面において、寄附金、募金に依拠しなければならないことは、当該施設が全国的に広がらない原因にも捉えられる。国、県など行政が全面的に支援するべきと考える。
・保育士処遇改善(金銭面での給付は限界・職場環境の改善)。
●幼児教育の無償化
・保育料無償化による利用者の動向に注視。
・多子世帯に有利な軽減策の充実。
●東大和市ならではの取組み
・市制50周年と合わせた「子ども・子育て憲章」の制定。
・子どもの貧困や青少年支援を視野に入れた『子ども・子育て総合計画』の策定。
B 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
・保育士確保対策(市単)の給与改善や賃貸住宅、駐車場経費の補助など実効的施策。
・保育のおしごと説明相談会の開催(6月・11月の年2回開催)。
・病児・病後児保育室のお迎えサービス(小児科クリニックとの連携)。
・訪問看護師派遣委託。
視察先3:秋田県横手市・市民福祉部健康推進課
視察テーマ:「健康の駅よこて」の取組について
@取組の経緯・内容
秋田県の内陸南部に位置する横手市は、平成17年10月に横手市、増田町、平鹿町、雄物川町、大森町、十文字町、山内村、大雄村の8市町村が合併して誕生した県都秋田市に次ぐ第二の市である。合併当初の総人口は103,652人であったが平成30年12月末では90,324人に減少している。また、高齢化率は全国トップの秋田県であるためか36.84%(H30.12月末)で、全国平均27.7%よりもだいぶ高い地方都市である。
同市が取り組む「健康の駅」は、地域住民の健康維持を目的として、健康のための活動を行う施設のことで、集まる人たちが自由に交流できる拠点(サロン)でもある。「健康の駅」は、NPO法人地域交流センター「健康の駅推進機構」により認証登録される施設で、❶老若男女問わず、集まりやすい取り組み。❷生活習慣病、介護予防に有効な健康維持増進プログラムを実施していること。の2点が認証を受ける際のポイントになっている。
■「健康の駅よこて」の経緯
●旧横手市による取り組み
〈平成15年〉
全国有志市町村長の「提言・実践首長会」に横手市長が参加。「医療福祉部会」の中で「健康の駅・実践プロジェクト」に着手。市長は12月に「健康の駅構想」を指示。
〈平成16年〉
❶「健康の駅・開設準備室」の設置 ❷厚労省モデル事業「高齢者筋力向上トレーニング」実施 ❸上真山地区に第一号となる「小規模駅」を開設
〈平成17年〉
❶「健康の駅・推進室」設置 ❷大規模駅「健康の駅よこてトレーニングセンター」開設
●新横手市による取り組み
〈平成17年〉
10月1日、1市5町2村の合併により“新横手市”誕生。横手地域局福祉保健課内に「健康の駅推進室」を設置
〈平成18年〉
福祉環境部内に「健康の駅推進室」を設置し本庁機能となる
〈平成19年〉
「健康の駅よこて」が健康の駅の認証を取得
〈平成20年〉
市内西部地区及び南部地区に「大規模駅」を開設し3ブロック化
〈平成21年〉
「健康の駅よこて・らくらく体操」を考案し実践スタート
〈平成25年〉
「第1回健康寿命をのばそう!アワード」で優良賞を受賞
■「健康の駅よこて」の事業展開
市民の継続的な健康づくりを大・中・小の「健康の駅」に保健師や健康運動指導士、運動指導員が常駐し、利用者に足を運んでいただく仕組みで、担当スタッフは以下。
〇健康推進課「健康の駅」係 事務職3人、保健師2人
〇健康の駅担当保健師 ・市内地域局8人、包括支援センター1人
〇健康の駅サポーター ・有資格サポーター10人
【大規模健康の駅】(拠点型)
❶東部トレーニングセンター 健康運動指導士3人、運動指導員4人
❷西部トレーニングセンター 健康運動指導士3人
❸南部トレーニングセンター 健康運動指導士2人、運動指導員1人
・平成30年度の延べ利用者数33,143人(平均年齢49.94歳)
【中規模健康の駅】
・公民館等24箇所に開設 運動指導員や市民ボランティアを派遣する駅
・平成30年度の延べ利用者数3,224人(平均年齢74.02歳)
【小規模健康の駅】
・町内会館等97箇所に開設 運動指導員を派遣する駅
・平成30年度の延べ利用者数24,574人(平均年齢77.93歳)
■「健康の駅」を利用することで期待できる健康効果
・生活習慣病予防 ・生活習慣病の重症化予防 ・体の痛み緩和 ・身体機能の維持
・動きやすい体づくり ・低栄養予防 ・認知症予防 ・ロコモ予防 ・介護予防
・閉じこもり予防 ・人との交流の場の拡大 ・社会参加の拡大 ・ストレスの解消
・健康情報の収集 など
A 今後の課題
〇全国的に増加している認知症対策で、❶タッチパネル式機器の充実 ❷物忘れ相談会の実施 ❸専門病院との連携 等への取り組みの必要性。
〇「中規模健康の駅」「小規模健康の駅」の参加者が高齢化しているので新規参加者の開拓とリーダーの育成が求められている。
〇介護予防や国保データベースによる効果検証(費用対効果の検証)
B 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
「健康の駅」の取り組みは、本市においても即導入可能な事業と感じた。本市が取り組んでいる「健康マイレージ」をさらに普及・拡大していくための有効な手法と思えるし、「健康マイレージ進化型」は、この「健康の駅」との組み合わせでこそ実現可能ではないだろうか。
横手市と同様に、大規模(公共体育館施設利用・全世代型トレーニングタイプ)、中規模(地区交流センター利用・中高年向けタイプ)・小規模(町内会館利用・後期高齢者向けタイプ)に分けつつ、全市民、全世代に周知し取り組んでいけば、本市が標榜する「健康・予防 日本一」に名実ともに近づくのではないかと考える。