■視察先:草加市/野田市(2019.7.30〜7.31)報告者:遠藤久仁雄
視察先1:埼玉県草加市
視察テーマ:そうかリノベーションまちづくり事業について
(1)草加市の概要と課題について
市面積はわずか27㎢だが、人口は25万人弱。古くは奥州・日光街道の2番目の宿場町として栄え、草加せんべいで有名である。昭和30年代頃から東京のベットタウンとして栄え、人口の著しい増加が見られた。そんな急開発のベットタウンゆえに、市内で楽しむ場所(レジャー、商業施設、飲食店)が少なく、そのため市民にとって愛着の感じられないまちであった。行きたい店、交流する場、ライフスタイルに合わせた働く場が不足しているなど、市民間、世代間の交流があまり見られなかった。
(2)そうかリノベーションまちづくり事業の歩み
平成25年に、「草加駅東口周辺にぎわい創出調査」を実施し、その後庁内調整会議や各種団体のヒアリング等の事業を継続した。平成28年には、「リノベーションスクール」を開催し、第1号店として野菜とお酒のパル「スバル」をオープンさせた。これ以降、このリノベーションスクール開催により多くの案件が事業化されている。
(3)「リノベーションスクール」とは
草加市内外から集まった受講生が、「ユニット」と呼ばれるチームに分かれ3日間をかけて、地域に必要なサービスや人々が豊かになるための仕掛け、人が集まる仕組みなどを意欲的に研究し、発表しあい、その結果として全員で考えた案件を事業化する試みです。メニューは「まち歩き」に始まり、「オープニングパーティ―」「ユニットワーク」「ライブアクト」「公開プレゼンテーション」「クロージングパーティ」である。
2 本市に取り入れたい事項&リノベーション施設を見学した感想
恰好の物件と資金と意欲的な事業者がいれば、どんな場所であっても、とりあえず出店すること自体は可能であろう。しかし、その店が自立し、継続し、将来にわたりその地域を活性化させることができるかは、大変難しい問題である。草加市の「リノベーションスクール」は、市内外から多くの様々な人種が集まり、「まち興し」に関わり、採用された案件を事業化し、創業へとつなげるプログラムである。これにより大勢の人々の関心と応援が得られ、起業後の力強い支援となることが期待される。本市でも、このような仕掛けを試みるのも、面白いかもしれない。特に旧商店街でのデッドスペースの活用に際し、長期間かけて多くの人々に意見を出し合ってもらう取り組みができたらと考える。
昼食をいただいた蔵カフェ「中屋」、夕食の野菜とお酒のパル「スバル」はともに個性的なお店で繁盛していた。また、市役所から車で10分位の住宅街にある、子連れで働けるシェアアトリエ「つなぐば」では、若いオーナーの奥様が藤枝市出身ということで、大いに盛り上がりました。ご主人とは、リノベーションスクールで知り合ったということで、素敵な出会いだと思いました。実際の建物を見てもらえばわかるのですが、普通だったら住む人がいなくなって解体された物件でしょうが、それをリフォームし、大勢の人が利用しやすくすることで、今では子どもを連れて働きながら母親同士のコミュニティが出来上がっています。気張らず自然体で生活していて、また多くの仲間に囲まれ、素晴らしい人生を送っているなとうれしくなりました。
視察先2:千葉県野田市
視察テーマ:⑴移動販売車「まごころ便」について
⑵コミュニティバス「まめバス」について
1 移動販売車「まごころ便」について
(1)概要
中心市街地から離れて生活し、日常の生活圏に買物の不便さを感じている人々のために、地域に密着した生活協同組合パルシステム千葉が独立採算制で行い、市が移動販売車の購入と、運営費の一部を助成して事業を実施している。
(2)運営方法
個人商店の営業を妨げないよう配慮(コンビニ店を含み、半径300メートルの範囲内に既存店舗がないこと)して、市内3コースを設定し、全部で37のステーションを、2トントラックで巡回している。利用者は車両の後方から上がり、冷凍庫や冷蔵庫が完備した車内を回遊し買い物を楽しむ。各コースとも、1週間に2日ずつの巡回となっている。パルシステム千葉、中根店を起点に発着し、商品の追加、補充も可能なルートとなっている。
(3)本市に取り入れたい事項
この営業自体、大した利益はないとの説明であった。たまたま生協の営業所が野
田市内にあるので可能な事業となっている。本市では数年前に生協が撤退してしまっているので、実施は不可能と思われる。
2 コミュニティバス「まめバス」について
(1)概要
平成15年に野田市と関宿町が合併し、南北に細長い地域となった。翌16年、
住民からの要望を受け、また、合併による行政の合理化によって生み出される財源を活用し事業化の運びとなった。
(2)運営方法
3ルートを運行。北ルート20便(片方向10便ずつ)、中ルート10便(同5便ずつ)、南ルート11便(6便+5便)。300mから500m間隔を目安にバス停を設置。料金は100円均一(他ルートへの乗り継ぎは1回まで無料)障がい者50円、小学生50円。8時から18時までの時間帯に運行。
(3)本市に取り入れたい事項
環境に配備したクリーンで静かなミニサイズの車両であり、野田市の名産品であ
る「枝豆」の色や形を取り入れた可愛いデザインとなっている。市民から「まめバス」と呼ばれ、たいへん親しまれている。狭い路地を通り抜け、市役所や鉄道駅を結んでいる。本市の場合、各地域から市立病院に向かうバスルートについて、路線バスとの競合を避けての運航について可能性を検討することが大切と思われる。