■視察先:横手市/湯沢市/福島市(2018.10.23〜10.25)報告者:遠藤久仁雄
視察先1:秋田県横手市
視察テーマ:食と農からのまちづくりについて
横手盆地の中心都市として発展。面積は692㎢、人口は92,000人。肥沃な土壌に恵まれ穀倉地帯として有名だが、りんご・ぶどうを始めとする果物や野菜類の生産も盛んである。第一次産業就業者の比率が16.18%と高い数値である。(本市は3.54%)
1 取組の経緯・内容
御多分に漏れず、横手市も少子高齢化が進み、町を支えてきた農業についても、後継者の問題等、様々な悩みを抱えている状況にある。これまでまちを支えてきたのは、まぎれもない米作を中心とした農業であるが、これからのまちづくりを考えたとき、今一度地域の宝である食と農を見つめなおし、これらを最大限に活用することが大切であるという考えに至った。米作が中心となるが、盆地特有の寒暖の差を活かしたりんごやぶどう、スイカ等の果実栽培、里芋、せり、食用菊等の野菜栽培など品数は抱負である。さらに、米を使用した糀の文化が盛んであり、漬物・味噌・醤油・日本酒などの加工品も豊富である。地元においては、まずこれらの地産地消に努めており、食と農に関するフォーラムを開いたり、地元FM放送での情報提供を盛んに行っている。また、物産展を開き、これらの産品を仙台圏や首都圏、さらに海外に向けてプロモーション活動に取り組んでいる。
2 今後の課題
販路の拡大という課題が挙げられると思うが、これだけ新鮮で上質の産品が生産されているのだから、これらを見合った価格で販売できるようになることが重要になってくる。横手ファン創出の取り組みについても説明されていたが、もっと横手を有効にPRすることで、必ず支持者が増えると確信する。
3 本市に反映できると思われる点
はっきり申し上げるなら、農産物について横手と競合する品目で、本市が勝負できるものは少ないと感じました。それほど横手の農産物は美味です。イチゴ、ミカンなどは別ですが。横手市ですごいと思ったのは、農産物の直売所が18か所もあり、そのほとんどが通年営業しています。また、朝市も4か所あり、これも通年営業です。このうちJAが関係しているのは、わずか4か所です。本市と異なり、このように多くの直売所を設けていることは、生産者にとっての意欲の向上になり、大きなメリットが生まれると思います。本市でも、産直グループでまとまり、価格面も含めて生産者が自分の考えで生産品を売れる仕組み作りを取り入れたいものです。
4 その他(感想、意見)
私は、試しに一日目の夜、駅近くのスーパーで買い物をしてみましたが、りんご、ぶどう、柿の果物等全て美味。特にぶどうのスチューベンは今まで食べた中で最高でした。また、いぶりがっこ(大根を燻し、ぬか漬けした)は絶品でした。自分自身が横手のリピーターになってしまいました。視察終了後、生産者に問い合わせ、11月上旬のりんごと、12月下旬の新いぶりがっこの発注を済ませました。
視察先2:秋田県湯沢市
視察テーマ:「パルシステム秋田南部圏」「食と農推進協議会」について
1 取組の経緯・内容
湯沢市、横手市、JA秋田ふるさと、こまち農業協同組合、雄勝りんご生産同志会、生活協同組合パルシステム千葉・東京など、行政・農協・生協など10団体により構成されている。ここでは商品取引や開発にとどまらず、都市と農村の交流を深めるなどの体験型の交流が続いている。パルシステムで最も重要なことは、生産者から消費者に安全・安心に商品を届けることです。それには第一に産地や生産者を知ってもらうこと、そして生産方法や出荷基準が知らされ、生産者がどんな考えで農業に取り組んでいるのかがわかること。さらに相互の交流の機会を持つこと等が挙げられます。このことについて、湯沢市の担当者は「商品にはストーリーがあるのです。」と説明されていました。取り組みの中には、秋田南部圏のブランド作りや商品供給拡大などがありますが、一番の特色は生産者と消費者の相互交流を推進し、グリーンツーリズム、地域づくりの可能性を追求していることです。首都圏から秋田を訪れ、「あきたこまち田植え体験」「りんご収穫体験」「郷土料理教室」などの産地交流体験を行い、生産者との交流を深めます。地域を知る、農作業の体験を通して生産者の気持ちを知ることができます。「産直とは、作り手と食べ手がともに育むもの」という考え方です。
2 今後の課題
本年度は、東日本大震災や福島第一原子力発電所の被害にあった福島在住の皆さんを招き、遠隔地で一定期間過ごしてもらうという保養企画を実施助成しています。
有意義な事業となり、秋田南部圏のイメージアップにつながることを期待します。
首都圏からの産地交流体験の参加者への助成については、南部圏の市町村からの助成金、生協等パルからの助成金、米一俵当たり生産者から8円の拠出金があるそうです。そのため参加者が払う経費は、東京から1泊2日の日程で、大人29,800円、子供は16,000円という大変安い金額になっています。受け入れの体制に苦労すると思われますが、拡大できればと思いました。
3 本市に反映できると思われる点
秋田南部圏で取り組んでいるような、消費者に生産者の思いやその栽培方法を知ってもらうために、本市へ足を運んでもらって交流を深めることは、素晴らしい取り組みだと感じました。農産品を食する人々に安心・安全な気持ちを持っていただくこと、農作業の困難さや喜びを知ってもらうことは、生産者にとってもこの上ない喜びだと思います。人気があり、余裕のある生産者は、是非挑戦していただきたいものです。
4 その他(感想、意見)
これだけ優れた農産品を生み出しているにもかかわらず、農業従事者の収入は高くない様子でした。後継者のことを考えた時、これが問題だと思いました。
視察先3:福島県福島市
視察テーマ:福島市再生可能エネルギーの取り組みについて
1 取組の経緯・内容
福島市は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、飛散した放射性物質により市全域が汚染された。その後放射線量は低下してきているものの、市民の環境に対する意識はたいへん高いものがあり、将来のエネルギー政策について市全体で取り組む決意が見られる。省エネルギー生活に努めるとともに、地域の特性に合った再生可能エネルギーの導入に向け、市、市民、事業者が一体となって将来の年度目標を定め、この達成に向け努力を続けている。その努力目標の数値は、市、市民、事業者の全体で、福島市の電力消費量のうち、エネルギー自給率を20年度には30%、30年度には40%、そして40年度には50%を目指そうというものである。その中で一般住宅の太陽光発電システムの普及率については、20年度は13%、30年度は25%、40年度は40%を見込んでいる。これは計画通りに進むなら、2040年になると福島市では10軒に4軒の家に太陽光発電装置が設置されるということになる。
2 今後の課題
市の避難所等の施設に、太陽光発電等の設備を設置する数値目標は、計画通り達成可能と思われる。しかしその一方で、再生可能エネルギー発電量の多くが期待されている市民や事業者の目標値は達成が困難ではないかと予想される。市民について考えると、新築住宅なら直ちに太陽光発電装置の設置が可能だろうが、ある程度の年数を経過した住宅においては設置に関連しての困難もあるし、市の補助が果たして十分なのかということが問題となってきそうだ。さらに今後の電気の買取価格の低下も懸念される。事業者については、バイオマスや風力、小水力発電等も考えられるものの、今後の伸びが期待できるのは、やはり太陽光発電であろう。そこで問題になるのが、太陽光発電により生じた電力の買取に関する問題である。今後、東北電力により積極的にこれらの再生可能エネルギーを買い続けることが保証されるなら事業は進展するだろうが、そううまく事が進むとは考えにくい。不安を抱えての再生可能エネルギー導入推進計画です。
3 本市に反映できると思われる点
福島市では、東京電力福島第一原子力発電所の放射能汚染により被害を受けたことにより、地球温暖化対策に向け、自分たちのまちの消費電力の多くを、自分たちのまちで作り出す再生可能エネルギーで賄おうという考えに至った。本市は状況は違うが、この福島市の考え方を見習い、省エネ対策と再生可能エネルギーの導入について研究していく必要を感じる。新クリーンセンターでの発熱を利用して、どのようなエネルギーの利用が可能かをしっかりと研究していきたい。
4 その他(感想、意見)
福島市の再生可能エネルギー導入推進計画は、20年・30年・40年の数値目が示され、市民にとってわかりやすい計画となっている。実現には困難が伴い、達成されるという保証はないが、市全体でこれに向かう意義は大きいと感じた。