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■平成30年度上期「健康福祉委員会」行政視察報告(委員:平井 登)

■視察先:長野市/佐久市(2018.8.2〜3)報告者:平井 登
長野市「認知症初期集中支援チーム」視察

長野市「認知症初期集中支援チーム」視察

佐久市「オールマイティパス」視察

佐久市「オールマイティパス」視察

視察先:長野市・保健福祉部地域包括ケア推進課
視察テーマ:認知症初期集中支援チームについて


 1 取り組みの経緯・内容
 長野県長野市の人口は、平成30年5月末日現在378,862人。そのうち65歳以上の老年人口は109,497人で高齢化率は28.9%。偶然にも高齢化率は藤枝市とまったく同じである。また、認知症日常生活自立度レベルU以上(日常生活に支障を来たすような症状・行動などが見られる)と判定された人は、30年4月末日現在12,755人いるという。
 同市は、国が認知症対策として平成25年から施行している「認知症施策推進総合戦略(オレンジプラン)」に基づく「認知症初期集中支援チーム設置促進モデル事業」の指定(全国14の自治体が選定される)を厚生労働省から受け、「長野市認知症初期集中支援チーム」の活動を開始している。
この事業の目的は、認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けるために、認知症の人やその家族に早期に関わり、早期診断と早期対応を図るもので、あわせて支援体制の整備に取り組むものである。
具体には、認知症の症状が軽い段階から必要な治療や支援につなげて進行を遅らせたり、家族の相談を受けたりして、日常生活で工夫・改善できる点などを一緒に考えていく体制づくりである。この事業の利用についての相談窓口は、本人が居住する地区の地域包括支援センターで、相談内容により関係機関と連絡を取り、支援している。
 認知症初期集中支援チームのスタッフは、12人(内科医1人・神経内科医1人、保健師4人、看護師1人、作業療法士3人、社会福祉士1人、介護福祉士1人)で構成されている。
 
2 今後の課題
❶認知症の症状が出始めてから数年を経て相談する場合が多いことから、「地域包括支援センター」と「認知症初期集中支援チーム」の活動をもっと周知させる必要があること。
❷本人の医療受診への抵抗感が強く、本人の意思尊重の面からハードルが高いこと。
❸症状の出始めの人、若年性認知症の人、70歳前後で発症した方について、支援サービスへの結び付けが難しいこと。
❹かかりつけ医、認知症専門医と地域包括支援センターとの連携強化が必要なこと。
❺認知症初期や若年性認知症の方、その家族の居場所づくりの必要性。また、キャラバンメイト、認知症サポーター等の市民ボランティアとの交流拡充が必要なこと。
❻かかりつけ医等による、もの忘れ相談事業や認知症相談会等の相談支援事業の活用が不十分のため、認知症地域支援推進員の活動をより活発化させていくこと。
❼県が配置した若年性認知症コーディネーターとの連携により、本人の意思を施策に反映していく取り組みが必要なこと。
 
3 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
 長野市における「認知症初期集中支援チーム」の広範囲な活動取り組みの中で光るのは、「認知症カフェ」を平成26年度以降18箇所も設けている点である。同市の面積は、834㎢と本市の4倍強あり行政エリアも広いとは言え、各地域の認知症対策への関心と理解が浸透している証と捉えることができる。認知症の人が本人なりに自己実現できる場、家族が介護の悩みなどを共有できる場、そして、地域の人が認知症について学べるコミュニティの場が認知症カフェである。 
本市においても市民ボランティ(キャラバンメイト・認知症サポーター等)の協力を得ながら、空き家や地区交流センター等の一角を利用した「認知症カフェ」の開設を、より積極的に推進していただきたいと考える。
  また、同市では「若年性認知症」への支援を本年度から本格的に進めている。この支援のポイントは、、県が配置する「若年性認知症コーディネーター」と連携することで、本人やその家族の意見を聴き取り、適切な治療と支援サービスに結び付けるところにある。その機会となるのが、「本人ミーティングながの」で、認知症の本人同士が主になって自らの症状の体験や必要となる治療、コミュニケーションについて相互に語り合いながら、これからのことを一緒に考え相談できる場である。同時に、付き添う家族同士が話し合える場にもなっており、この取り組みも本市として是非進めていただきたいと思う。
 
4 その他(感想、意見)
 日本の認知症高齢者の数は、65歳以上の7人に1人、2025年には、約5人に1人まで増えると見込まれている。いつだれがかかってもおかしくない難しい病気であるが、認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らしたい、あるいは家族や地域に迷惑をかけたくない、そんな本人の思いを理解しつつ、ご家族への理解と支援も必要であることを行政は市民に対し、しっかり周知・啓発させていくことが大事かと思う。
国の進める新オレンジプランには、7つの柱に沿った具体できめ細かな施策が網羅されているが、本市独自の地域性や市民性などを考慮した実効性のあるサービスを提供しなければならない。そのためには、地域包括ケアシステムにおける体制のさらなる充実とともに前述の「認知症カフェ」や「本人ミーティング」等を通した、本人主体の医療と介護が進められるよう、行政・関係機関・自治会等が連携し、創意工夫をもって努力しなければならないと感じた。


視察先:佐久市・福祉部子育て支援課 
視察テーマ:オールマイティパスについて


1 取り組みの経緯・内容
 長野県佐久市の人口は、平成30年3月1日現在99,302人。高齢化率29,05%であるが、全国有数の健康長寿都市として保健・医療分野では優位性や独自性を発揮され、行政視察も絶えない先進都市である。
今回視察テーマとしたのは、少子高齢化という全国的な人口減少社会にあって、同市における独自の子育て支援策「オールマイティパス」についてである。
 同市は、平成18年3月23日に「子育て支援都市」の宣言を行っている。これは、これまでの様々な子育て支援施策の取り組みに加え、この宣言を契機として、さらに子育て支援の充実に努め、市民が未来に希望をもって、また、安心して子どもを産み育てることができるよう、やさしい都市づくりを目指そうとするものである。
多彩な大小様々の施策がある中、とりわけ同市ならではの大型事業として注目できるのは、市内全小学校に設置されている「児童館(遊戯室・図書室・集会室・工作室兼クッキングルーム等が整備されている)」である。平成5年の「野沢児童館」を皮切りに、順次開館し、平成27年に「佐久平浅間児童館」まで全19館を設けている。「遊びは、仲間関係の形成や児童の社会性の発達と規範意識の形成に大きな影響がある」との認識の基に、児童が自主的に参加し、自由に遊び、安全に過ごすことのできる放課後や週末等の居場所として運営されている。
 さて一方、きめ細やかな施策としてユニークなのが、平成26年7月からスタートした「オールマイティパス」である。これは、佐久市民に限定しない全世界の小学校1年生を対象に、市内にある公共施設、宿泊施設等が無料で利用できるパスポートタイプの利用券である。対象施設で、オールマイティパスを提示すれば、その児童に限り、入場料・宿泊料等を1年間無料で利用でき、さらに協賛企業店舗の各種サービスが受けられるというもので、好奇心や探求心が芽生えた小学1年生の「学び」や「やる気」、「気づき」を育み、子ども達の夢と子育て家庭を応援することを目的とされている。以下、平成29年4月1日における対象施設数、パス発券場所を記す。
●対象施設数:体験学習施設3、文化施設6、体育施設2、観光交流施設6、
交通機関(市内巡回バス、千曲バス、東信観光バス)
協賛企業店舗サービス数24、等
●パス発券方法:市内の小学1年生約900人には4月に学校を通して発給。
市外の方は、郵送や電子メール、佐久市子育て支援課・子ども未来館や佐久平PA等で受給できる。
 
 市内全小学1年生および市外の小学1年生を対象にしているが、平成29年度の実績では、発券数(市内906+市外135=1,041)、協賛企業店舗利用者数(634人)となっている。また、パス利用条件として、保護者の同伴が必須となっているため、同伴者の施設利用による経済効果も期待されている。同年の同伴者数は3,580人、その内2/3を大人、1/3を子どもと想定し、施設利用料2,528,033円の試算をされていた。
 
2 今後の課題
❶小学1年生に限定した事業であることで、反動として進級以降の利用が減る懸念がある。
❷対象施設が公共施設中心のため経済波及効果は小さい。今後、民間事業者への協賛をさらに募り、地域経済向上につなげることの工夫が求められる。
❸長野県の「地域発元気づくり支援金」、「地域の元気を生み出す地域づくりに資する事業」の認定・補助を受けた事業のため継続性に不安がある。
❹広域市町村連携で同事業を拡充することを検討されるようであるが、果たして同市にとってプラスになるかマイナスに作用するか、判断は難しいと思われる
 
3 本市に反映できると思われる点、また、参考になった点
  佐久市の「オールマイティパス」は、好奇心や探求心が芽生えた小学1年生の「学び」や「やる気」、「気づき」を育み、子ども達の夢と子育て家庭を応援する取り組みを目的としている点で、非常にインパクトのある、また、分かりやすい施策だと評価したい。佐久市の場合、対象は小学1年生であるが、例えば本市では、未就学園児(3歳〜5歳)を対象にして同様の事業を実施し、子育て世帯の本市への移住促進・定住促進につなげるようにしたらどうだろうか。
また、これまで本市では、「ふじえだマイレージ」として、健康・教育・環境・交通安全の4K施策を推進するための事業を18歳以上の市民等を対象に行ってきているが、中々しくみが面倒で特典も差ほど魅力がないためか、参加する市民数や協力店数も伸び悩んでいる状況ではないだろうか。佐久市のように対象や特典を絞り込むことで、話題性とともに実効性や経済効果も高くなると思う。マイレージの対象者を年齢限定、例えば、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳等と節目の方だけ1年間有効にし、特典ももっと魅力あるものにしたらどうだろうか。その場合、協力店への助成が必要になるが、市税を支える生産年齢の市民の愛着心や市内の経済・観光の活性化にも寄与できるのではないか。ふるさと納税の収益をこうした施策で市民に還元するのも悪くないと思う。
 
4 その他(感想、意見)
 佐久市の新たな取り組みである「教えて!ドクター・プロジェクト」は、子育て家庭における小児特有の疾病への適切な対処と不安解消、同時に医療現場における軽症患者の病院受診の増加抑制効果が期待できる事業として注目したい。事業の内容は、子どもの病気のホームケア、救急車を呼ぶタイミングや病院受診の目安等をまとめた「マニュアル冊子」の配布。そのマニュアルの内容を網羅した「無料アプリ」の配信。また、小児科医による市内の保育所等への「出前講座」。さらには、出前講座での意見を基にニーズの高い追加情報の「SNS発信」等、「子育て支援都市」の片鱗をうかがわせる先進の取り組みに感嘆した。本市でも、この事業は早急に取り組む必要があると考える。