■視察先:高槻市/彦根市(2017.10.12〜13) 報告者:遠藤久仁雄
●視察先(1):大阪府高槻市
●視察テーマ:生活困窮者支援の取り組みについて
大阪と京都の中間に位置するベットタウンであり、人口35万人超の中核市である。
1 取組の経緯・内容
市役所総合センター8階にある自立支援相談窓口では、生活に困窮する市民が様々な問題を抱え相談に訪れているが、その中でも高槻市では特に「就労準備支援」の取り組みに力を入れている。平成26年11月から「ハローワークコーナー」を設置し、2名のハローワーク就職支援ナビゲーターが常駐し、2台の求人検索機を使い就労支援にあたっている。この結果、平成27年度には、ハローワークを利用した生活困窮者84名のうち57名が就労につながり、全国180カ所の同コーナーで全国一位の実績であった。これにより平成26年度まで増加傾向にあった生活保護の新規件数が平成27年度より減少に転じた(564世帯→495世帯)。引き続き28年度に於いても、生活保護者、生活困窮者ともに高い就労率となっている。
2 今後の課題
引きこもり者への就労支援に特に力を注いでおり、大変な労力を費やしていることが分かる。相談者の乱れた生活を見つめなおすため、就寝、起床などの生活記録を付けることから始め、食生活指導、運動指導、会話訓練等、職場体験へのステップとなるあらゆる分野にチャレンジしているが、大変な労力を要し、時間のかかる事業となっている。そして同時に、優秀な支援員の確保も引き続きの課題となっている。
3 本市に反映できると思われる点
今、本市でも引きこもりの成人が増加して、これは隠れた大きな社会問題となっている。親のたくわえや年金に頼り、また幸いにも親の住まいがあり、外出しなくても何とか生活ができ、親もなるべくこのままでの生活をと望んでいるケースが多い。しかし、親の死後その多くは生活保護に頼ることになると思われる。市町や地域が協力し、一人でも多くの引きこもり者に寄り添い、手厚い指導を続けることにより、今の生活からの脱却を試み、さらに就労への援助を続けることが必要だと考える。そのためには本市の自立生活サポートセンターに専属の相談員を1名配属し、高槻市のように対象者に寄り添い生活指導から始め、ハローワークの前段階になる職場体験への設定等をねんごろに行う等の体制づくりが必要と考える。
4 その他(感想、意見)
成人の引きこもり者への就労については、本市でも高槻市と同様の取り組みは行
われているものの、その数は少ないと感じる。将来の生活保護者の増加を食い止めるためにも、またその人の今後の人生のことを考え、これまで以上の積極的なアプローチが必要であると考える。地域住民の力にも期待して、本事業を展開させたい。より一層の住民を巻き込んだ事業運営を期待します。
●視察先(2):滋賀県彦根市
●視察テーマ:生活困窮者支援の取り組みについて
1 取組の経緯・内容
就労支援事業に力を入れており、就労支援員(常勤)、被保護者就労支援員、外国人就労支援員の計3名で対応している。選定会議を毎週2回、2時間ずつ開き、一人につき1時間ずつ、計4名を対象に計画している。ここではクライアントの希望職種、能力等を把握し、求人情報から採用面接日までを設定する。その他に就労準備支援員(常勤)が配置され、クライアントに農作業体験や社会福祉施設の清掃作業等で労働の体験をさせるなど、様々な職種への挑戦を試みている。その他、履歴書の書き方指導や、採用試験の面接時のためのスーツ等の貸し出しも行っている。
また、学力向上支援事業では、生活保護家庭に絞って実施しており、平成23年から続けられている。現在は、小学校高学年から高校生、一部に外国人や引きこもりの成人もいるが、主な対象は中学生である。本市と違い、一人ひとりの学力に合わせたメニューになっていて、全て訪問型のマンツーマン学習である。
2 今後の課題
学力向上支援事業は、生活保護家庭に絞っての取り組みであるが、中心となる中学生については約70%の参加率である。マンツーマンでの訪問型の学習になっており、実際には指導の中でその時間の多くを学習以外の話し合いに充てている様子も見受けられ、果たして真の学力向上になっているのか事業効果について疑問を感じた。この事業を通し、生活保護家庭からの信頼を得ていることはプラスであるが、残りの30%の生徒については、接点が見られないのが不安である。
3 本市に反映できると思われる点
本市では、生活保護家庭に加え就学援助家庭の児童生徒約50名を対象に事業を行っている。彦根市は生活保護家庭のみに限定しているので、本市と事情は異なるが、その中では学習支援の方法が個に適した内容となっており、それをマンツーマンで教えているところが特長である。このためには多くの支援員が必要となるので、本市の事業にすべて導入することはできないが、現在授業者に加え数人の静岡大学生もサポートに加わってくれている。本市に於いても、可能な範囲内で同じような個別指導を効率的に実践されたい。
4 その他(感想・意見)
生活困窮者とその家族に対し、食の提供、住の提供等いろいろな支援が行われているが、やはり一番の支援となるのは就労支援と子どもに対する学習支援ではないだろうか。両者とも事業が軌道に乗れば、いずれも未来に向かい希望の持てるものへと発展することができます。生活困窮者には、当面の支援は勿論必要ですが、将来の夢へとつながる支援をしてあげることが大切です。教育格差の解消とか、負の連鎖を断ち切るとか言われていますが、何よりも当事者に、自分で自分の夢を抱いてもらうことが大切だと感じました。