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■平成29年度上期「健康福祉委員会」行政視察報告(委員:遠藤久仁雄)

■視察先:奈良県生駒市/岡山県岡山市/兵庫県相生市(2017.7.31〜8.2)
目的別の地域ケア会議を開催

目的別の地域ケア会議を開催

もも太郎体操でみんな元気!

もも太郎体操でみんな元気!

日本一のこども子育て支援

日本一のこども子育て支援

●視察先⑴:奈良県生駒市
●視察テーマ:地域包括ケアシステムの構築について

 
 県の北西部に位置し、大阪都心部へ私鉄で約20分の距離にあるベッドタウンである。人口は12万人弱で、納税者一人当たりの所得は高い。

1 取組の経緯・内容
 地域包括ケアの実現に向けて、その前段となる地域包括会議の取り組みが行われたのは、平成15年のことである。当初は専ら支援困難なケースに対応する、いわゆる個別課題を解決するための会議であり、主に高齢者の支援や地域での見守り体制を構築することなどに力点が置かれていた。平成18年からは、介護予防の推進や地域づくり、地域のネットワークづくりにも力を注ぎ、平成24年の「地域包括支援センター運営マニュアル」作成に至った。これによりこれまでの地域ケア会議に加え、保険者が主体的に会議を開催し、自立支援に重点を置く政策に反映させていくための地域ケア会議が構築された。ケア会議は、目的別に以下の4種類に分類される。地域ケア会議U(当初より存在した会議で、対象者の周囲の関係及び関係機関が地域のネットワークを広げ、支援体制の構築を図る。)、地域ケア会議V(地域の実情を把握し、地域支援体制の整備を行う。住民と協働したまちづくりをしていくための会議である。地区の実情やニーズを追求する。)、地域ケア会議W(認知症に特化したもので、自治会での見守りネットワークの在り方や、自治会レベルで認知症理解を深めるための会議である。)、地域ケア会議T(介護保険サービスを利用しない方で、国のモデル事業である市町村介護予防強化推進事業に同意した新規の経度認定者を対象としている。あくまで自立支援というカテゴリに特化した会議である。)

2 今後の課題
 認知症の理解を深めようと各自治会単位での取り組みが行われている。この中で生まれた様々な考えを市全体に広げる段階で、共有・定着には時間が掛かるという報告であった。これについては当然だと思うし、それでよいのではないだろうか。

3 本市に反映できると思われる点
 
生駒市に於いては、認知症への理解のため、まず自治会レベルから勉強を始めて、これを市全体にまで広げようとする試みを行っているが、この取り組みを評価したい。「認知症高齢者を排除しないまちづくり」を目指しているが、とても良いことだと感じた。藤枝市の現在のレベルでも、すぐに取り組めると思われる。徘徊者への理解と併せて、実施できないか。

4 その他(感想・意見)
 本市でも福祉関係の分野において、生駒市と同様の取り組みは数多く行われているものの、どうしても行政主体の活動が多いのではないだろうか。生駒市では、住民の力(潜在能力)に大いに期待して各事業を展開しているように感じられた。より一層の住民を巻き込んだ事業運営に感心させられました。


●視察先⑵:岡山県岡山市
●視察テーマ:介護予防・日常生活支援総合事業について
       オレンジプラン(認知症施策の指針)について


1 取組の経緯・内容
 総合事業への移行の背景には、以下の4点が挙げられる。所謂25年問題(75歳以上高齢者の急増)、生活支援ニーズの増加と介護人材の不足、介護予防事業に伴い高齢者の生きがいや支援の仕組みの要求、保険料の高騰と給付費の増大。このような状況の中で、岡山市では本年度から総合事業がスタートしたが、この中身は全国一律的なものであり、本市と大きな相違は見られなかった。オレンジプランは、平成26年に、認知症対策の指針として地域・保健・医療・福祉・介護など関係者が連携して策定された。適切なケア体制の確立、地域の見守り体制の確立、関係機関のネットワークの構築、認知症の人や家族への支援の強化などが挙げられている。

2 今後の課題
 高齢者がたまったポイント数に応じて換金できるシステムとして、2つの事業が紹介された。一つは介護保険からの卒業者が自らの健康づくりや介護予防に取り組む必要から設けられた「介護予防ポイント事業」であり、他は地域のリーダーが介護予防事業のサポート活動を行う「サポーターポイント事業」である。しかし、これらの利用は低調であった。本市近隣では、静岡市が似たようなポイント制の事業を始めているが、こちらはどうであろうか。

3 本市に反映できると思われる点
 岡山市では、地域の居場所づくりの一環として、2種類の「認知症カフェ」を立ち上げています。一つは各福祉区ごと計6カ所に設置された「基幹型カフェ」で、ここでは専門職が配置され、患者・家族支援と早期発見・支援の強化に力を入れています。年額24万円で委託し、月2回以上開催されます。もう一つは市内8カ所の「地域型カフェ」で、認知症の正しい知識と理解の普及啓発の強化に努めています。認知症サポートリーダー等が運営に加わり、年額3万円の補助で月1回以上実施されています。本市でも何カ所かの居場所が紹介されていますが、まだ単なる居場所であって(もちろんいろいろな活動は行っていますが)、例えば認知症の早期発見を行うとか特別の指導をしているわけではないと思うので、今後は居場所開設の目的の一つに加えて運営されることが良いと思いました。
 「あっ晴れ!もも太郎体操」に関連した話ですが、数年ほど前に藤枝市の「こんぴら倶楽部」というデイサービスから頼まれまして、私のオリジナル曲を使ってリハビリ体操が作成されました。DVDに収録されて、今でも施設では使われていると聞いています。   

4 その他(感想・意見)                                       
 「あっ晴れ!もも太郎体操」を体験して、良い運動になりました。長い時間を掛けて、無理なく取り組むのがいいですね。高齢者の皆さんの社交の場にもなっていて、認知予防にもよさそうです。


●視察先⑶:兵庫県相生市
●視察テーマ:子ども・子育て応援施設について


1 取組の経緯・内容
 危機的な財政状況からの脱却のため、「第1期相生市行財政健全化計画(平成18〜22年度)」を策定、平成18年度よりスタートした。特に22年度当初予算額は、17年度当初予算額の20%削減であり、27億6千万円の効果が生まれた。そんな中、最重要課題となったのが人口減少問題であり、昭和49年の42,188人から減少に転じ、これは平成27年には30,129人へと減少している。15歳未満の年少人口割合も県下で最下位となった。この課題を解決するため、「第2期行財政健全化計画(平成23〜27年度)」がスタートしたが、人口減少対策と併せて、教育・子育て・少子化対策、産業の活性化を重点とした。そして23年度には、相生市子育て応援都市宣言を行い、現在では各種政策を「暮らしやすい11の鍵」としてまとめて宣伝している。その中で一段と目を引くのは、15歳までの医療費無料、幼小中学校の給食費完全無料、保育料の無料など、他市町では真似のできない事業となっている。

2 今後の課題
 相生市は自然環境にも恵まれた落ち着いたまちで、人口わずか3万人ながら新幹線の停車駅を有し、山陽本線・赤穂線が通り、陸路では山陽自動車道も通り、姫路・岡山への便もたいへん良い。それにもかかわらず、定住施策開始後も人口の社会増減はマイナスであったが、ここに来てやっと2年間はプラスに転じている。また、出生数は年間200人程度を維持している。合計特殊出生率は、本市よりやや高い1.48である。これだけの子育て施策を行っているにもかかわらず若年層の人口が増えない原因の一つに、医療機関の問題があるのかもしれない。市民病院はあるものの、市内に小児科と産婦人科が無いということが、大きな要因になってはいないか。タクシー券などの一定額の補助はあるものの、やはり不安を感じる若者は多いのではないか。しかし交通の便と環境は優れているので、現状の子育て支援策に教育分野での目玉が新たに生まれれば、人が集まってくると期待感を抱かせるまちである。

3 本市に反映できると思われる点
  「11の鍵」は相生のように、小規模な自治体だからこそできる事業である。特に幼小中学校の給食費完全無料化や、幼稚園等の保育料無料などは、本市で実施する場合には多額の出費を余儀なくされてしまうので実現不可能と思われる。

4 その他(感想、意見)  
 本市で言うALT(外国語指導教師)は1名しか採用されていなかった。小学校5・6年生を対象に、放課後の居場所づくりとして、週1回の国語と算数の学習塾、月2回程度の英語と珠算の教室を寺子屋方式で教えていた。指導者は、主に地域の退職教員などがボランティアで行い、学校の教室を開放していることは素晴らしいことだと感じた。地域で育てるという、教育分野の目玉の一つに発展できないか。
 (文責:遠藤久仁雄)