■平成29年度上期「建設経済環境委員会」行政視察報告(委員:平井 登)
■視察先:豊岡市/京丹後市/日進市(2017.8.2〜4) 報告者:平井 登
●視察先(1):兵庫県豊岡市
●視察テーマ:地域主体交通「チクタク」の取り組みについて
1 取組の経緯・内容
豊岡市は兵庫県の日本海側に位置し、平成17年に1市5町(豊岡市・城崎町・竹野町・日高町・出石町・但東町)が合併し、改めて豊岡市として発足している。面積は約697㎢あり兵庫県の自治体中最も大きく、その内79.3%が森林面積である。人口と世帯数は、83,554人・33,043世帯(平成29年4月1日現在)で、平成17年の89,208人比較で5,654人の人口減少となっている。同市はコウノトリの野生復帰に取り組むまちとして、また、近年は城崎温泉を中心に欧米の外国人観光客が急増しているまちとして活気がある。同市では、人口規模は小さくても世界の人々から尊敬され、尊重される「小さな世界都市」を目指されていることもあり、公共交通の施策には、住民視点、観光客視点からも注目できる先進的取り組みがあることから今回の視察となった。
同市の市内公共交通の種別は現在4つの体系に分かれている。
❶事業者所有の緑ナンバー車両の路線バス「全但バス」 〈一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法第4条)〉 ▲市持出経費概算:約130,000千円/年間
❷市所有の緑ナンバー車両で全但バス鰍ノ委託する市街地循環バス「コバス」 〈一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法第4条)〉 ▲市持出経費概算:約13,000千円/年間
❸市所有の白ナンバー車両で事業者に委託する市営バス「イナカ―」 〈市町村有償運送事業(道路運送法第78条)〉 ▲市持出経費概算:約30,000千円/年間
❹市所有の白ナンバー車両で地元組織に委託する地域主体交通「チクタク」 〈市町村有償運送事業(道路運送法第78条)〉 ▲市持出経費概算:約4,000千円/年間
上記、4体系の運行目的は次の通りである。
❶路線バス「全但バス」=中心市街地、地域拠点、地域拠点間の移動性確保。
❷市街地循環バス「コバス」=市街地の回遊性確保。
❸市営バス「イナカ―」=路線バス休止対応・地域拠点間の移動性確保。
❹地域主体交通「チクタク」=交通空白地域における住民主体の取り組みを市が支援。
※但し、利用できるのは会員登録した地域住民のみ。
このような体系が整ってきた背景には、平成19年9月、「全但バス」の運行事業者・全但バス鰍ェ市内路線バス運行の赤字を理由に、26路線中の11路線を平成20年10月から休止するという撤退申し出があったことに起因する。その対応策として同市では、平成20年10月1日から市営バス「イナカ―」を、一般旅客運送事業者に委託して当初11路線を運行させるが、利用率が市の定める基準に満たない路線については、その後の平成22年に路線の廃止を当該地域に通知する。そうしたところ、当該地区の区長から「助けてほしい。出来ることは地元でする」との申し入れがあったことから、「地域の地域による地域のための公共交通」をスローガンに、市と協議・検討。そこから生まれた事業案=地域主体公共交通「チクタク」(地区のタクシーの意)が、実際に運行可能かどうかを5ヶ月間の試験運行(パイロット事業)で検証し、平成23年4月1日より本格運行を実施されている。
現在は、4地域で4台が地域の運行組織により運営されている。
以下が、「チクタク」の事業概要である。
●事業主体:豊岡市 ●運行委託先:地域の運行組織 ●使用車両:市公用車(普通自動車)を無償提供 ●運転手:ボランティア運転手を地域で確保 ●事務員等:運行管理者、事務員を地域で確保 ●利用者:地域住民(会員登録制) ●ダイヤ:地域で決定(週3日運行※病院の診察日等) ●停留所:地域で決定(地区内フリー降車) ●運賃:100円〜200円(豊岡市有償旅客運送条例) ●運行方法:定時定路線運行(予約制)
以上の概要であるが、基本的に地域住民のための地域住民による、地域の参画・協力が不可欠の運営スタイルであり、市の役割は事業実現のために必要な国交省、運輸支局等の許認可手続き及び交渉と車両の無償貸与、そして運行経費の助成である。
運行経費の内容は、●運転手当:3,000円/日(実働分)※ボランティア運転手の報酬
●事務委託料:20,000円/月※予約受付と運転手手配、必要書類作成等 ●消耗品費:20,000円/年※事務用品や車載品等、となっており運賃収入と市補助金で賄っている。
「チクタク」の利用者数は運行当初より安定しており、その理由として、◎実利用者のニーズに対応した行先設定(役所・病院・ショップ等) ◎ドアー・ツー・ドアに近いサービス ◎管理者や運転手、事務員への身近さ、親近感 等々を挙げている。
「チクタク」の生まれた背景を振り返ると同市では次のようにまとめられている。
『少子化・超高齢化等の社会的要因により、「公共交通の存続が厳しい」地域となられた住民が、その現状を真摯に受け止め理解した上で、「交通弱者を地域で守る」と決断(覚悟)した。それを受け、市は地域の決断(覚悟)を尊重し実現させるため、市町村有償運送「チクタク」を開始し、支援した。』
2 今後の課題
市町村有償運送事業(道路運送法第78条)に基づいて運行される地域主体交通「チクタク」は、地域住民のボランティアによる非営利の運行スタイルによって維持されることから、市の持出経費が低く抑えられていることが分かる。また、需要と供給のバランスにおいても常に、住民ニーズに柔軟に対応して改善・向上を図れる運行組織であるため、今後将来にわたって継続できるポテンシャルを持っていると思われる。
課題としては、人口減少地域にあって運行組織を継続する人材の確保に帰結するが、「チクタク」の理念を語り継ぎつつ事業承継し、市も確実なる支援・助成をいつまで持続できるか、という点であろうか。
3 本市に反映できると思われる点
「チクタク」の運行形態は、そのまま本市でも当て嵌められる地域があると感じた。例えば、瀬戸谷や谷稲葉、葉梨西北、朝比奈といった中山間地域であり、現在路線バスや市自主運行バスが回っていない空白地域での活用である。
「チクタク」の良さは、運行ルートやダイヤ、停留所設定を、地域の要望にきめ細かく対応できる点であるが、何よりも利用料が100円〜200円という格安の点である。このことは、交通弱者や運転免許自主返納者には大きな魅力であることから、潜在的ニーズは強く広いと思える。問題は、本市において「市町村有償運送事業(道路運送法第78条)」の許認可が得られるほどの過疎状況になっているかどうか、と同時にやはり地域住民が「地域の足は地域で創り、地域で運営する」の覚悟と決断がなければ、行政としても支援・助成のしようもない訳である。いずれにしても本市の『地域公共交通会議』や議会において、豊岡市のような先進事例の視察や研究を通じて得た知見を地域に反映(投影)させ、機運を高める仕掛けがまず必要と考える。
●視察先(2):京都府京丹後市
●視察テーマ:「ささえ合い交通(住民タクシー)」の取り組みについて
1 取組の経緯・内容
京丹後市は京都府北端の日本海側に位置し、平成16年4月1日に旧国名・丹後国の3郡6町(中郡=峰山町・大宮町、竹野郡=網野町・丹後町・弥栄町、熊野郡=久美浜町)が合併し、京丹後市として市制施行されている。面積は約501.5㎢あり京都府では4番目の面積ランクで、藤枝市の約2.6倍ある。人口と世帯数は、56,168人・22,724世帯(平成29年4月末現在)で、平成16年4月末の65,802人比較で9,634人の人口減少(過疎地域指定)となっている。
同市は山陰海岸国立公園と丹後天橋立大江山国定公園に指定され、同市を含む山陰海岸ジオパークはユネスコ世界ジオパークに認定されているなど、日本の原風景と変化に富む美しい地形が魅力のまちである。同市では、「市民と地域がキラリと光り輝くまちに」をスローガンに、美食観光、子育て・教育支援、人材育成、就労支援等さまざまな分野で施策を推進しながら人口減少等の課題解決を目指している。その一環ともなる公共交通施策について、同市丹後町の「ささえ合い交通(住民タクシー)」誕生の背景と運営状況を視察させていただいた。
まず、丹後町が抱えていた交通課題であるが、公共バスは丹後海陸交通鰍ェ運営する路線バス「丹海バス」のみで、運行本数も1日10数本が幹線道路を軸に走っていた。また、町内のタクシー営業所は不採算性から平成20年に撤退している。そのような公共交通過疎地域にあって、平成17年に大規模な市民アンケートが実施され、それを反映させた『上限200円バス』の運行が翌18年から「丹海バス」で開始される。その効果は目を見張るもので利用者、運賃収入ともに年々増加し、現在では市内全域に上限200円バスの路線が運行されている。今回の視察でも、網野駅から間人診療所前までの区間約12qを200円バスで移動したが、約30分もの間、風光明媚な景色を眺めつつ快適なバス旅情を味わえた。今やこの200円バスは京丹後市の名物となっているが、丹後町ではさらに、「丹海バス」が運行できない公共交通空白地の解消を図るべく、平成26年7月からデマンド型の『上限200円市営バス(10人乗り)』の運行をNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」に委託し運行させた。
ただ、このデマンド型市営バスは、路線バス「丹海バス」と法制上競合してはならないため、丹後町の中央に跨る山々に二分された限定区域での運行(❶豊栄竹野線、運行日:火・木・土、❷宇川線、運行日:月・水・金)となっており、路線バスのように両地区を行き来出来ないことや運行日が変則的であること。また、デマンド特有の前日までの電話予約制といった点など、住民には必ずしも至便な公共交通ではなかったようである。
その欠点を補うべく平成28年5月26日から運行開始されたのが、今回の視察目的の「ささえ合い交通(住民タクシー)」で、『自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)』に基づく住民主体交通である。
以下が、「ささえ合い交通(住民タクシー)」の事業概要である。
●事業主体&運行管理:NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」 ●運転手&使用車両:地元のボランティアドライバーとドライバー所有の自家用車 ●運行システム:UBER JAPAN鰍フICTによる配車システム ●運行区域:乗車は丹後町のみ。降車は京丹後市全域 ●料金:最初の1.5kmまで480円、それ以遠は120円/km(藤枝市のタクシー料金より約3割安い) ●運行時間:午前8時〜午後8時まで365日運行
以上であるが、最大の特徴はUBER JAPAN鰍ニ提携したICT配車システムで、丹後町内にいる利用者は、スマートフォンアプリ(Uber)で即座に配車依頼でき、最寄りのボランティアドライバーが即時に利用者の現在地へ迎えに来て、希望の行先(京丹後市内)に送る、というGPS位置情報を活用したシステムである。同町内には、登録ドライバーが18名おり、Uber Japan社の運行ルールに従った信頼できる配車管理システム、自動決済システム等により運営されている。利用者は高齢で車を持たない住民がほとんどで、買い物や通院に利用されているという。また、観光客も丹後町に来て、このアプリをダウンロードし登録すれば利用できる。「丹海バス」下車後の二次交通手段として至便となるため、同町ではそのPRにも努められている。
この「ささえ合い交通」が比較的スムースに運行開始できるようになった背景には、平成26年7月から受託していたデマンド型市営バスの運営実績があったことと、同町の立地的要因(市の中心部から最も遠い過疎地)により、タクシー業界の反発も限定されていたからではなかろうか。また、NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」のメンバーにとっても、地域住民や観光客に喜ばれるボランティア活動を通じての生きがいや多少の副収入が得られることも原動力になっていると思われる。
2 今後の課題
交通弱者とは一般的に高齢者が多く、それはまた、スマートフォンやタブレットといった通信端末に不慣れな方でもある。この「ささえ合い交通(住民タクシー)」を利用するには、まずこの壁を越えなければならない。代理サポーター制度の拡充と啓発、そしてやはり利用者が自ら通信端末を購入ないし利用できるように新たな補助事業の検討も必要かと思われる。また一方にある、運行区域の問題。つまり、乗車は丹後町内に限定されつつも降車は京丹後市全域で可能となっている点は、視察対応された同NPO法人専務理事の東和彦氏も懸念され指摘されていたように「行きはよいよい帰りは怖い」交通政策になっている点である。利用者としては、京丹後市全域にこの「ささえ合い交通(住民タクシー)」が張り巡らされることを望むのであろうが、一般タクシーや路線バス等との共存共栄を図る上で、現行の関係法令の制約もあり、実現は当面難しいのではないかと思える。
3 本市に反映できると思われる点
国土交通省が定める自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)の種別には、『市町村運営有償運送』の範疇となる「交通空白輸送=市町村の交通空白地において、市町村自らが当該地市町村内の住民等の運送を行うもの」と、「市町村福祉輸送=当該市町村の住民等のうち、他人の介助によらず移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な身体障害者等であって、市町村に会員登録を行った者等に対して、市町村自らが行う、原則としてドアー・ツー・ドア―の個別輸送を行うもの」がある。
また、市町村を運営主体としないNPO法人等が主体となる「公共交通空白地輸送=NPO法人等が交通空白地において、当該地域の住民やその親族等の会員等に対して運送を行うもの」と、「福祉有償輸送=NPO法人等が、他人の介助によらず移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な身体障害者等の会員に対して、乗車定員11人未満の自動車を使用して、原則としてドアー・ツー・ドア―の個別輸送を行うもの」がある。
丹後町では、このうち後者のNPO法人等による「公共交通空白地輸送」に着目され、加えてUBER JAPAN鰍ニ提携したICTによる画期的な運行形態を実現させている。
本市においては現在、「藤枝市自主運行 バス停型乗合タクシー」が藤枝駅広幡線と藤枝駅光洋台線、そして、藤岡・高田・清里地区から市立総合病院を繋ぐ路線で運行されているが、その利用状況、利便性をまずは精査・検証し、今後の可能性や課題を洗い出してみたい。その上で、丹後町と同種同様の事業展開が可能かどうかを検討する方がよいかと思うが、タクシー事業者の理解を得ることが最大の難関となるであろう。それは、瀬戸谷や朝比奈等といった中山間地域等をタクシー事業者は、どの程度の需要性と採算性に位置付けているか、という問題でもある。また関連して、自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)「公共交通空白地輸送」の運行区域をどのように設定するかも、難しい問題となろう。さらには、UBER JAPAN鰍ニの提携が可能かどうかもある。いずれにしても、『藤枝市地域公共交通会議』において、地域の要望や潜在需要の調査をするなどして丹後町のような先進事例が、本市にも適用できるか検討・研究すべきと考えるが、まずはモデル地域を限定したパイロット事業として取り組むのが藤枝市らしいやり方かもしれない。
4 その他(感想)
今回の視察では、過疎地や交通空白地における公共交通のあり方を豊岡市と京丹後市の先進事例を参考に勉強させていただいた。
豊岡市の地域主体交通・利用料上限200円の「チクタク(地区のタクシー)」は、交通空白地域における住民主体の取り組みを市が支援・助成する取り組みであった。
一方の京丹後市丹後町では、「ささえ合い交通(住民タクシー)」として、NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」が運行主体となって一般タクシーの約半額の運賃を対価として運営する非営利型の取り組みであった。
両者とも、自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)に基づいた事業であるが、地域固有の事情に適応するべく、行政が主体となった事例とNPO団体が主体となった事例を好対照的に比較することができた。このことで、藤枝市の公共交通政策の在り方における課題抽出や課題解決の手法が見えてきた感がある。
わたしなりに得たポイントは、やはり当該地域におけるキーパーソンズ(一人では無理)の存在有無であると確信した。地域のために、地域みずから企画する創造力、地域一丸で具現化する団結力、そしてその中核となる人々の存在なくして、両市の事業は実現できなかったことを学ばせていただいた。本市公共交通政策室には、そんなキーパーソンズを見出し、刺激し、地域と協働し合う努力をお願いしたい。
●視察先(3):愛知県日進市
●視察テーマ:「ごみ分別収集・エコドーム」の取り組みについて
1 取組の経緯・内容
日進市は、愛知県の中部に位置し、西の名古屋市、東の豊田市に接した面積34.91㎢(藤枝市の約1/5.5)のコンパクトな市であるが、大都市および大企業が立地する近郊ということもあり毎年約1,000人ペースで人口が増え続けている全国でも屈指の人口増加自治体である。平成29年8月1日現在の人口・世帯数は、89,324人・35,760世帯である。このように急激に増加していく人口・世帯数に対して市政の課題は多岐にわたることは容易に想像できるが、とりわけ今回視察したごみ処理についての施策事業を重視・拡充させており、全国トップレベルの取り組みを実施されている。
同市では平成8年に第一次の『一般廃棄物処理基本計画』を策定して以降、13年度に第二次を策定し、併せて関連する4条例を施行。以後5年刻みで同計画の見直しと策定を繰り返し、現在は第三次を見直した計画が本年度から推進されている。また、ゴミの分別収集についても、昭和45年から「ごみ有料化」に取り組み、可燃ごみ指定袋、不燃ごみ指定袋、プラスチック製容器指定袋や粗大ごみ戸別収集等の有料化を順次採用して市民のゴミ分別およびリサイクル意識向上を図ってきている。
そのようなごみ施策の沿革がある中、全国から注目を浴びたのが平成11年に同市役所の隣接地に開設されたごみ持込み型の資源回収ステーション「エコドーム」で、その運用目的や実績・評価等について市民生活部環境課の鬼頭主幹から、ご説明と同施設の現場案内をしていただいた。
以下が「エコドーム」の概要である。
■目的:⒈高齢者の雇用機会 ⒉資源回収の拠点(資源の持込みによるごみの減量)⒊環境教育・学習の場 ⒋展示室・活動室 ⒌子供用品リサイクルショップ
■施設:1,844uの敷地内に作業棟、管理棟、温室棟、駐車場(22台分)がある。太陽光発電設備(最大出力6.68㎾)
■建設費:設計・監理、施工費等の総合計78,000千円
■財源:⑴社会福祉施設等施設整備事業補助金(介護保険関連サービス基盤整備事業) ⑵太陽光発電新エネルギー財団補助金 ⑶市内企業寄附金 ⑷一般財源
■営業日時:火曜日〜日曜日 午前9時〜午後5時
■分別種類:29種(紙類6品目・布類1品目・プラスチック類4品目・危険物2品目・びん類3品目・かん類2品目 その他11品目)
■回収量・売却益:1,978t・11,309千円(H28年度)
■運営費:19,247千円(H28年度)※収支の不足分は一般財源で補填
以上概要であるが、特徴として、❶週5日、1日8時間もの営業 ❷高齢者の雇用機会増進(エコドーム施設管理業務と清掃業務) ❸子ども用品リサイクルショップの運営 ❹生ごみ堆肥化用「ぼかし」製造・販売、等々が挙げられる。
これらによるエコドームの評価は、●市民の分別意識の向上。●リサイクル率の向上。●高齢者の社会貢献意識の向上。●幼年人口増加に対応した子ども用品リサイクルショップによる再利用の推進。●子ども用品再利用活動を通じて高齢者の生きがい創出。●市民の持込みによるごみ処理経費および資源回収経費の軽減。●小中学生の分別体験等による環境教育と高齢者とのふれあいの創出。以上のような成果がある。
2 今後の課題
同市環境課によると、❶エコドームの立地が市役所に隣接していることから利用頻度が高く、駐車スペースや回収資源の保管スペースが不足していること。❷分別や環境問題意識の高い利用者の要望に対応しきれていないこと。❸リサイクルショップで子ども用品以外の取り扱いの要望があること。❹資源売却単価が下落していること。❺管理棟にある環境学習スペースの利用が減少していること。を挙げられている。
その対策として、●新たな資源保管場所の模索、資源搬出方法の改善。●リサイクルショップ取扱品目の拡充の検討。●資源持込みのさらなる啓発。●エコドーム運営費用の見直し。●管理棟の環境学習スペースのESD《Education for Sustainable Development》[一人ひとりが、世界の人々や将来世代、環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革するための教育]の拠点施設として検討。
以上5つを視点に課題解決を目指されるようだ。
また、エコドームに限らず同市のごみ処理全体の課題として、❶財政の逼迫によるごみ処理費用削減の必要性。❷最終埋め立て処分場用地の確保が困難。❸スプレー缶等の破裂事故をなくす。の3つを挙げられ、その対策として家庭から排出されるごみから効率的に資源を分離し、最終処分場や市財政への負担を軽減する方法を模索。
併せて、本年度から順次、燃えないごみの分別と収集方法および収集曜日・地区割りを変更してさらなる効率化を図られることを掲げている。
3 本市に反映できると思われる点
ごみ持込み型の資源回収ステーション「エコドーム」は、現地を視察してみて意外と規模が小さく、それでいて大きな効果・成果を上げられていることに驚いた。また、建設費も1億円以下と低く、運営費用も高齢者雇用(シルバー人材センターに委託)のため年間2千万円弱と最小限に感じた。とは言え、日進市は人口密度が本市の約3.3倍あり、当然ゴミの発生量が多い中、わずか1箇所のエコドームの収支実績は平成25年度以降赤字に転じており、一般財源からの補填額は拡大傾向にある。同市環境課が課題として挙げられた、持込みスペースと保管スペース等の拡充が実現した場合に果たしてどの程度、収支率が改善するのだろうか。
本市において、同様の施設を仮に市役所近辺に設けたとしても、日進市の5倍以上の面積に散在し生活している市民がわざわざ持ち込むかは、きわめて難しいと考える。かといって例えば、地区交流センター毎に同施設を設置した場合の建設費および運営費と資源およびリサイクル品売却益との収支率はきわめて厳しくなることは火を見るより明らかであろう。
本市の現状の資源回収方法は行政と事業者が上手く機能した、充分に先進的かつ合理的な方法であり、市民の分別意識の浸透とともに実績も向上していると評価している。敢えて資源回収ステーションを設けないまでも、衣料品の回収や再利用促進等の仕掛けは、現在行われているように地区交流センターの一角利用でよいのではないか。
人口密集都市(日進市)と人口散在都市(藤枝市)とによって、資源回収の合理的・効率的方法は自ずと差異があり、費用対効果の面からも然様であろう。本市ではESD機能を備えた新クリーンセンターの建設を間近に控え、現行の資源回収方法やゴミ処理方法を維持しつつ、分別意識とリサイクル意識のさらなる啓発と徹底を促すことがもっとも相応しいと感じた次第である。
(文責:平井 登)
●視察テーマ:地域主体交通「チクタク」の取り組みについて
1 取組の経緯・内容
豊岡市は兵庫県の日本海側に位置し、平成17年に1市5町(豊岡市・城崎町・竹野町・日高町・出石町・但東町)が合併し、改めて豊岡市として発足している。面積は約697㎢あり兵庫県の自治体中最も大きく、その内79.3%が森林面積である。人口と世帯数は、83,554人・33,043世帯(平成29年4月1日現在)で、平成17年の89,208人比較で5,654人の人口減少となっている。同市はコウノトリの野生復帰に取り組むまちとして、また、近年は城崎温泉を中心に欧米の外国人観光客が急増しているまちとして活気がある。同市では、人口規模は小さくても世界の人々から尊敬され、尊重される「小さな世界都市」を目指されていることもあり、公共交通の施策には、住民視点、観光客視点からも注目できる先進的取り組みがあることから今回の視察となった。
同市の市内公共交通の種別は現在4つの体系に分かれている。
❶事業者所有の緑ナンバー車両の路線バス「全但バス」 〈一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法第4条)〉 ▲市持出経費概算:約130,000千円/年間
❷市所有の緑ナンバー車両で全但バス鰍ノ委託する市街地循環バス「コバス」 〈一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法第4条)〉 ▲市持出経費概算:約13,000千円/年間
❸市所有の白ナンバー車両で事業者に委託する市営バス「イナカ―」 〈市町村有償運送事業(道路運送法第78条)〉 ▲市持出経費概算:約30,000千円/年間
❹市所有の白ナンバー車両で地元組織に委託する地域主体交通「チクタク」 〈市町村有償運送事業(道路運送法第78条)〉 ▲市持出経費概算:約4,000千円/年間
上記、4体系の運行目的は次の通りである。
❶路線バス「全但バス」=中心市街地、地域拠点、地域拠点間の移動性確保。
❷市街地循環バス「コバス」=市街地の回遊性確保。
❸市営バス「イナカ―」=路線バス休止対応・地域拠点間の移動性確保。
❹地域主体交通「チクタク」=交通空白地域における住民主体の取り組みを市が支援。
※但し、利用できるのは会員登録した地域住民のみ。
このような体系が整ってきた背景には、平成19年9月、「全但バス」の運行事業者・全但バス鰍ェ市内路線バス運行の赤字を理由に、26路線中の11路線を平成20年10月から休止するという撤退申し出があったことに起因する。その対応策として同市では、平成20年10月1日から市営バス「イナカ―」を、一般旅客運送事業者に委託して当初11路線を運行させるが、利用率が市の定める基準に満たない路線については、その後の平成22年に路線の廃止を当該地域に通知する。そうしたところ、当該地区の区長から「助けてほしい。出来ることは地元でする」との申し入れがあったことから、「地域の地域による地域のための公共交通」をスローガンに、市と協議・検討。そこから生まれた事業案=地域主体公共交通「チクタク」(地区のタクシーの意)が、実際に運行可能かどうかを5ヶ月間の試験運行(パイロット事業)で検証し、平成23年4月1日より本格運行を実施されている。
現在は、4地域で4台が地域の運行組織により運営されている。
以下が、「チクタク」の事業概要である。
●事業主体:豊岡市 ●運行委託先:地域の運行組織 ●使用車両:市公用車(普通自動車)を無償提供 ●運転手:ボランティア運転手を地域で確保 ●事務員等:運行管理者、事務員を地域で確保 ●利用者:地域住民(会員登録制) ●ダイヤ:地域で決定(週3日運行※病院の診察日等) ●停留所:地域で決定(地区内フリー降車) ●運賃:100円〜200円(豊岡市有償旅客運送条例) ●運行方法:定時定路線運行(予約制)
以上の概要であるが、基本的に地域住民のための地域住民による、地域の参画・協力が不可欠の運営スタイルであり、市の役割は事業実現のために必要な国交省、運輸支局等の許認可手続き及び交渉と車両の無償貸与、そして運行経費の助成である。
運行経費の内容は、●運転手当:3,000円/日(実働分)※ボランティア運転手の報酬
●事務委託料:20,000円/月※予約受付と運転手手配、必要書類作成等 ●消耗品費:20,000円/年※事務用品や車載品等、となっており運賃収入と市補助金で賄っている。
「チクタク」の利用者数は運行当初より安定しており、その理由として、◎実利用者のニーズに対応した行先設定(役所・病院・ショップ等) ◎ドアー・ツー・ドアに近いサービス ◎管理者や運転手、事務員への身近さ、親近感 等々を挙げている。
「チクタク」の生まれた背景を振り返ると同市では次のようにまとめられている。
『少子化・超高齢化等の社会的要因により、「公共交通の存続が厳しい」地域となられた住民が、その現状を真摯に受け止め理解した上で、「交通弱者を地域で守る」と決断(覚悟)した。それを受け、市は地域の決断(覚悟)を尊重し実現させるため、市町村有償運送「チクタク」を開始し、支援した。』
2 今後の課題
市町村有償運送事業(道路運送法第78条)に基づいて運行される地域主体交通「チクタク」は、地域住民のボランティアによる非営利の運行スタイルによって維持されることから、市の持出経費が低く抑えられていることが分かる。また、需要と供給のバランスにおいても常に、住民ニーズに柔軟に対応して改善・向上を図れる運行組織であるため、今後将来にわたって継続できるポテンシャルを持っていると思われる。
課題としては、人口減少地域にあって運行組織を継続する人材の確保に帰結するが、「チクタク」の理念を語り継ぎつつ事業承継し、市も確実なる支援・助成をいつまで持続できるか、という点であろうか。
3 本市に反映できると思われる点
「チクタク」の運行形態は、そのまま本市でも当て嵌められる地域があると感じた。例えば、瀬戸谷や谷稲葉、葉梨西北、朝比奈といった中山間地域であり、現在路線バスや市自主運行バスが回っていない空白地域での活用である。
「チクタク」の良さは、運行ルートやダイヤ、停留所設定を、地域の要望にきめ細かく対応できる点であるが、何よりも利用料が100円〜200円という格安の点である。このことは、交通弱者や運転免許自主返納者には大きな魅力であることから、潜在的ニーズは強く広いと思える。問題は、本市において「市町村有償運送事業(道路運送法第78条)」の許認可が得られるほどの過疎状況になっているかどうか、と同時にやはり地域住民が「地域の足は地域で創り、地域で運営する」の覚悟と決断がなければ、行政としても支援・助成のしようもない訳である。いずれにしても本市の『地域公共交通会議』や議会において、豊岡市のような先進事例の視察や研究を通じて得た知見を地域に反映(投影)させ、機運を高める仕掛けがまず必要と考える。
●視察先(2):京都府京丹後市
●視察テーマ:「ささえ合い交通(住民タクシー)」の取り組みについて
1 取組の経緯・内容
京丹後市は京都府北端の日本海側に位置し、平成16年4月1日に旧国名・丹後国の3郡6町(中郡=峰山町・大宮町、竹野郡=網野町・丹後町・弥栄町、熊野郡=久美浜町)が合併し、京丹後市として市制施行されている。面積は約501.5㎢あり京都府では4番目の面積ランクで、藤枝市の約2.6倍ある。人口と世帯数は、56,168人・22,724世帯(平成29年4月末現在)で、平成16年4月末の65,802人比較で9,634人の人口減少(過疎地域指定)となっている。
同市は山陰海岸国立公園と丹後天橋立大江山国定公園に指定され、同市を含む山陰海岸ジオパークはユネスコ世界ジオパークに認定されているなど、日本の原風景と変化に富む美しい地形が魅力のまちである。同市では、「市民と地域がキラリと光り輝くまちに」をスローガンに、美食観光、子育て・教育支援、人材育成、就労支援等さまざまな分野で施策を推進しながら人口減少等の課題解決を目指している。その一環ともなる公共交通施策について、同市丹後町の「ささえ合い交通(住民タクシー)」誕生の背景と運営状況を視察させていただいた。
まず、丹後町が抱えていた交通課題であるが、公共バスは丹後海陸交通鰍ェ運営する路線バス「丹海バス」のみで、運行本数も1日10数本が幹線道路を軸に走っていた。また、町内のタクシー営業所は不採算性から平成20年に撤退している。そのような公共交通過疎地域にあって、平成17年に大規模な市民アンケートが実施され、それを反映させた『上限200円バス』の運行が翌18年から「丹海バス」で開始される。その効果は目を見張るもので利用者、運賃収入ともに年々増加し、現在では市内全域に上限200円バスの路線が運行されている。今回の視察でも、網野駅から間人診療所前までの区間約12qを200円バスで移動したが、約30分もの間、風光明媚な景色を眺めつつ快適なバス旅情を味わえた。今やこの200円バスは京丹後市の名物となっているが、丹後町ではさらに、「丹海バス」が運行できない公共交通空白地の解消を図るべく、平成26年7月からデマンド型の『上限200円市営バス(10人乗り)』の運行をNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」に委託し運行させた。
ただ、このデマンド型市営バスは、路線バス「丹海バス」と法制上競合してはならないため、丹後町の中央に跨る山々に二分された限定区域での運行(❶豊栄竹野線、運行日:火・木・土、❷宇川線、運行日:月・水・金)となっており、路線バスのように両地区を行き来出来ないことや運行日が変則的であること。また、デマンド特有の前日までの電話予約制といった点など、住民には必ずしも至便な公共交通ではなかったようである。
その欠点を補うべく平成28年5月26日から運行開始されたのが、今回の視察目的の「ささえ合い交通(住民タクシー)」で、『自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)』に基づく住民主体交通である。
以下が、「ささえ合い交通(住民タクシー)」の事業概要である。
●事業主体&運行管理:NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」 ●運転手&使用車両:地元のボランティアドライバーとドライバー所有の自家用車 ●運行システム:UBER JAPAN鰍フICTによる配車システム ●運行区域:乗車は丹後町のみ。降車は京丹後市全域 ●料金:最初の1.5kmまで480円、それ以遠は120円/km(藤枝市のタクシー料金より約3割安い) ●運行時間:午前8時〜午後8時まで365日運行
以上であるが、最大の特徴はUBER JAPAN鰍ニ提携したICT配車システムで、丹後町内にいる利用者は、スマートフォンアプリ(Uber)で即座に配車依頼でき、最寄りのボランティアドライバーが即時に利用者の現在地へ迎えに来て、希望の行先(京丹後市内)に送る、というGPS位置情報を活用したシステムである。同町内には、登録ドライバーが18名おり、Uber Japan社の運行ルールに従った信頼できる配車管理システム、自動決済システム等により運営されている。利用者は高齢で車を持たない住民がほとんどで、買い物や通院に利用されているという。また、観光客も丹後町に来て、このアプリをダウンロードし登録すれば利用できる。「丹海バス」下車後の二次交通手段として至便となるため、同町ではそのPRにも努められている。
この「ささえ合い交通」が比較的スムースに運行開始できるようになった背景には、平成26年7月から受託していたデマンド型市営バスの運営実績があったことと、同町の立地的要因(市の中心部から最も遠い過疎地)により、タクシー業界の反発も限定されていたからではなかろうか。また、NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」のメンバーにとっても、地域住民や観光客に喜ばれるボランティア活動を通じての生きがいや多少の副収入が得られることも原動力になっていると思われる。
2 今後の課題
交通弱者とは一般的に高齢者が多く、それはまた、スマートフォンやタブレットといった通信端末に不慣れな方でもある。この「ささえ合い交通(住民タクシー)」を利用するには、まずこの壁を越えなければならない。代理サポーター制度の拡充と啓発、そしてやはり利用者が自ら通信端末を購入ないし利用できるように新たな補助事業の検討も必要かと思われる。また一方にある、運行区域の問題。つまり、乗車は丹後町内に限定されつつも降車は京丹後市全域で可能となっている点は、視察対応された同NPO法人専務理事の東和彦氏も懸念され指摘されていたように「行きはよいよい帰りは怖い」交通政策になっている点である。利用者としては、京丹後市全域にこの「ささえ合い交通(住民タクシー)」が張り巡らされることを望むのであろうが、一般タクシーや路線バス等との共存共栄を図る上で、現行の関係法令の制約もあり、実現は当面難しいのではないかと思える。
3 本市に反映できると思われる点
国土交通省が定める自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)の種別には、『市町村運営有償運送』の範疇となる「交通空白輸送=市町村の交通空白地において、市町村自らが当該地市町村内の住民等の運送を行うもの」と、「市町村福祉輸送=当該市町村の住民等のうち、他人の介助によらず移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な身体障害者等であって、市町村に会員登録を行った者等に対して、市町村自らが行う、原則としてドアー・ツー・ドア―の個別輸送を行うもの」がある。
また、市町村を運営主体としないNPO法人等が主体となる「公共交通空白地輸送=NPO法人等が交通空白地において、当該地域の住民やその親族等の会員等に対して運送を行うもの」と、「福祉有償輸送=NPO法人等が、他人の介助によらず移動することが困難であると認められ、かつ、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な身体障害者等の会員に対して、乗車定員11人未満の自動車を使用して、原則としてドアー・ツー・ドア―の個別輸送を行うもの」がある。
丹後町では、このうち後者のNPO法人等による「公共交通空白地輸送」に着目され、加えてUBER JAPAN鰍ニ提携したICTによる画期的な運行形態を実現させている。
本市においては現在、「藤枝市自主運行 バス停型乗合タクシー」が藤枝駅広幡線と藤枝駅光洋台線、そして、藤岡・高田・清里地区から市立総合病院を繋ぐ路線で運行されているが、その利用状況、利便性をまずは精査・検証し、今後の可能性や課題を洗い出してみたい。その上で、丹後町と同種同様の事業展開が可能かどうかを検討する方がよいかと思うが、タクシー事業者の理解を得ることが最大の難関となるであろう。それは、瀬戸谷や朝比奈等といった中山間地域等をタクシー事業者は、どの程度の需要性と採算性に位置付けているか、という問題でもある。また関連して、自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)「公共交通空白地輸送」の運行区域をどのように設定するかも、難しい問題となろう。さらには、UBER JAPAN鰍ニの提携が可能かどうかもある。いずれにしても、『藤枝市地域公共交通会議』において、地域の要望や潜在需要の調査をするなどして丹後町のような先進事例が、本市にも適用できるか検討・研究すべきと考えるが、まずはモデル地域を限定したパイロット事業として取り組むのが藤枝市らしいやり方かもしれない。
4 その他(感想)
今回の視察では、過疎地や交通空白地における公共交通のあり方を豊岡市と京丹後市の先進事例を参考に勉強させていただいた。
豊岡市の地域主体交通・利用料上限200円の「チクタク(地区のタクシー)」は、交通空白地域における住民主体の取り組みを市が支援・助成する取り組みであった。
一方の京丹後市丹後町では、「ささえ合い交通(住民タクシー)」として、NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」が運行主体となって一般タクシーの約半額の運賃を対価として運営する非営利型の取り組みであった。
両者とも、自家用有償旅客運送〈白ナンバー〉(道路運送法第78条第2号)に基づいた事業であるが、地域固有の事情に適応するべく、行政が主体となった事例とNPO団体が主体となった事例を好対照的に比較することができた。このことで、藤枝市の公共交通政策の在り方における課題抽出や課題解決の手法が見えてきた感がある。
わたしなりに得たポイントは、やはり当該地域におけるキーパーソンズ(一人では無理)の存在有無であると確信した。地域のために、地域みずから企画する創造力、地域一丸で具現化する団結力、そしてその中核となる人々の存在なくして、両市の事業は実現できなかったことを学ばせていただいた。本市公共交通政策室には、そんなキーパーソンズを見出し、刺激し、地域と協働し合う努力をお願いしたい。
●視察先(3):愛知県日進市
●視察テーマ:「ごみ分別収集・エコドーム」の取り組みについて
1 取組の経緯・内容
日進市は、愛知県の中部に位置し、西の名古屋市、東の豊田市に接した面積34.91㎢(藤枝市の約1/5.5)のコンパクトな市であるが、大都市および大企業が立地する近郊ということもあり毎年約1,000人ペースで人口が増え続けている全国でも屈指の人口増加自治体である。平成29年8月1日現在の人口・世帯数は、89,324人・35,760世帯である。このように急激に増加していく人口・世帯数に対して市政の課題は多岐にわたることは容易に想像できるが、とりわけ今回視察したごみ処理についての施策事業を重視・拡充させており、全国トップレベルの取り組みを実施されている。
同市では平成8年に第一次の『一般廃棄物処理基本計画』を策定して以降、13年度に第二次を策定し、併せて関連する4条例を施行。以後5年刻みで同計画の見直しと策定を繰り返し、現在は第三次を見直した計画が本年度から推進されている。また、ゴミの分別収集についても、昭和45年から「ごみ有料化」に取り組み、可燃ごみ指定袋、不燃ごみ指定袋、プラスチック製容器指定袋や粗大ごみ戸別収集等の有料化を順次採用して市民のゴミ分別およびリサイクル意識向上を図ってきている。
そのようなごみ施策の沿革がある中、全国から注目を浴びたのが平成11年に同市役所の隣接地に開設されたごみ持込み型の資源回収ステーション「エコドーム」で、その運用目的や実績・評価等について市民生活部環境課の鬼頭主幹から、ご説明と同施設の現場案内をしていただいた。
以下が「エコドーム」の概要である。
■目的:⒈高齢者の雇用機会 ⒉資源回収の拠点(資源の持込みによるごみの減量)⒊環境教育・学習の場 ⒋展示室・活動室 ⒌子供用品リサイクルショップ
■施設:1,844uの敷地内に作業棟、管理棟、温室棟、駐車場(22台分)がある。太陽光発電設備(最大出力6.68㎾)
■建設費:設計・監理、施工費等の総合計78,000千円
■財源:⑴社会福祉施設等施設整備事業補助金(介護保険関連サービス基盤整備事業) ⑵太陽光発電新エネルギー財団補助金 ⑶市内企業寄附金 ⑷一般財源
■営業日時:火曜日〜日曜日 午前9時〜午後5時
■分別種類:29種(紙類6品目・布類1品目・プラスチック類4品目・危険物2品目・びん類3品目・かん類2品目 その他11品目)
■回収量・売却益:1,978t・11,309千円(H28年度)
■運営費:19,247千円(H28年度)※収支の不足分は一般財源で補填
以上概要であるが、特徴として、❶週5日、1日8時間もの営業 ❷高齢者の雇用機会増進(エコドーム施設管理業務と清掃業務) ❸子ども用品リサイクルショップの運営 ❹生ごみ堆肥化用「ぼかし」製造・販売、等々が挙げられる。
これらによるエコドームの評価は、●市民の分別意識の向上。●リサイクル率の向上。●高齢者の社会貢献意識の向上。●幼年人口増加に対応した子ども用品リサイクルショップによる再利用の推進。●子ども用品再利用活動を通じて高齢者の生きがい創出。●市民の持込みによるごみ処理経費および資源回収経費の軽減。●小中学生の分別体験等による環境教育と高齢者とのふれあいの創出。以上のような成果がある。
2 今後の課題
同市環境課によると、❶エコドームの立地が市役所に隣接していることから利用頻度が高く、駐車スペースや回収資源の保管スペースが不足していること。❷分別や環境問題意識の高い利用者の要望に対応しきれていないこと。❸リサイクルショップで子ども用品以外の取り扱いの要望があること。❹資源売却単価が下落していること。❺管理棟にある環境学習スペースの利用が減少していること。を挙げられている。
その対策として、●新たな資源保管場所の模索、資源搬出方法の改善。●リサイクルショップ取扱品目の拡充の検討。●資源持込みのさらなる啓発。●エコドーム運営費用の見直し。●管理棟の環境学習スペースのESD《Education for Sustainable Development》[一人ひとりが、世界の人々や将来世代、環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革するための教育]の拠点施設として検討。
以上5つを視点に課題解決を目指されるようだ。
また、エコドームに限らず同市のごみ処理全体の課題として、❶財政の逼迫によるごみ処理費用削減の必要性。❷最終埋め立て処分場用地の確保が困難。❸スプレー缶等の破裂事故をなくす。の3つを挙げられ、その対策として家庭から排出されるごみから効率的に資源を分離し、最終処分場や市財政への負担を軽減する方法を模索。
併せて、本年度から順次、燃えないごみの分別と収集方法および収集曜日・地区割りを変更してさらなる効率化を図られることを掲げている。
3 本市に反映できると思われる点
ごみ持込み型の資源回収ステーション「エコドーム」は、現地を視察してみて意外と規模が小さく、それでいて大きな効果・成果を上げられていることに驚いた。また、建設費も1億円以下と低く、運営費用も高齢者雇用(シルバー人材センターに委託)のため年間2千万円弱と最小限に感じた。とは言え、日進市は人口密度が本市の約3.3倍あり、当然ゴミの発生量が多い中、わずか1箇所のエコドームの収支実績は平成25年度以降赤字に転じており、一般財源からの補填額は拡大傾向にある。同市環境課が課題として挙げられた、持込みスペースと保管スペース等の拡充が実現した場合に果たしてどの程度、収支率が改善するのだろうか。
本市において、同様の施設を仮に市役所近辺に設けたとしても、日進市の5倍以上の面積に散在し生活している市民がわざわざ持ち込むかは、きわめて難しいと考える。かといって例えば、地区交流センター毎に同施設を設置した場合の建設費および運営費と資源およびリサイクル品売却益との収支率はきわめて厳しくなることは火を見るより明らかであろう。
本市の現状の資源回収方法は行政と事業者が上手く機能した、充分に先進的かつ合理的な方法であり、市民の分別意識の浸透とともに実績も向上していると評価している。敢えて資源回収ステーションを設けないまでも、衣料品の回収や再利用促進等の仕掛けは、現在行われているように地区交流センターの一角利用でよいのではないか。
人口密集都市(日進市)と人口散在都市(藤枝市)とによって、資源回収の合理的・効率的方法は自ずと差異があり、費用対効果の面からも然様であろう。本市ではESD機能を備えた新クリーンセンターの建設を間近に控え、現行の資源回収方法やゴミ処理方法を維持しつつ、分別意識とリサイクル意識のさらなる啓発と徹底を促すことがもっとも相応しいと感じた次第である。
(文責:平井 登)