■視察先:山口県周南市/山口県夢のみずうみ村(2016.8.9〜10)
視察先⑴:山口県 周南市役所
視察テーマ:もやいネットセンター推進事業について
1 取り組みの経緯・内容
山口県東部に位置し、中心部は海岸線に沿って有数のコンビナート地帯が広がる港湾都市となっている。市面積は藤枝市の3倍強、人口はほぼ同じ15万人弱である。高齢化率が高く、地域で高齢者や弱者を見守りたいとの考えから、平成25年に「もやいネットセンター」を設置した。24時間365日の対応で、市・市社協・警察の三者の協定の元、地域と関わりのある事業者等が高齢者に目を配ることにより、高齢者を地域で安全に暖かく見守る事業となっている。「もやい」とは、「共に助け合う、堅い絆」という意味である。
2 今後の課題
全地区に31の「もやい地区ステーション」があり、それぞれに「地域福祉コーディネーター」が配置されているが、このコーディネーターの育成や今後の意欲的な取組を進める必要性が感じられた。また、「もやい徘徊ネットワーク」については、「しゅうなんメール」登録者が、まだ8500人という状況であり、藤枝市のような同報無線がないため、この広い地域でこれで充分な捜索ができるのか疑問でした。今後登録者を増やしたり、別の方法も併用することも必要だと考えました。
3 本市に反映できると思われる点
事業者や地域の見守り隊である「周南市もやいネット支援事業者」については、年々その輪を拡大してきている。水道・郵便局・新聞・ガス会社・銀行・保険会社・交通関係などの65業者と協定を済ませており、通常の営業活動の中で高齢者の生活の見守りを行い成果を上げている。本市でも事業者から同様な協力をいただいているが、周南市ではこの活動を「もやいネット支援事業」の中に明確に位置づけている。
4 その他(感想、意見)
市を挙げて取り組む「もやいネット推進事業」は、高齢化率の高い、広域に渡る周南市に暮らす住民にとって、安心感を与える目玉事業となっていると考えました。地域が広く合併前の状況などもあり、行政の困難さもあるのでしょうが、事業の中身が期待したほどのものではなかったのが残念でした。
視察先⑵:山口県 夢のみずうみ村
視察テーマ:夢のみずうみ村(山口デイサービスセンター)について
1 取り組みの経緯・内容
山口市にある、デイサービス施設「夢のみずうみ村」を訪問しました。普通、デイサービス施設と言うと、介護の程度に応じ施設側で用意した一日のメニューに従って通所者が生活し、食事をとり、時間が来たら無事送迎となります。しかしこの施設の特長は、一人ひとりの身体機能を高めるため、介護でありながらも、各自に自己目標を持たせ、それに挑戦するという能動的なプログラムを実施しています。自分で一日の生活を決める、目標を持たせるといった自己決定型のプログラムを採用しています。見学してみて分かるのは、ぼーっとしている人がいないということです。みんな何かしらの活動をしています。利用者には豊かな表情が見られます。可能な人はあえて杖は使わず、自力で歩行していました。そこには健康で長生きする秘訣が見られました。
2 今後の課題
余分なところには金を掛けないという経営方針のようで、施設が極めて質素なのには驚かされました。倉庫のような場所で生活されていましたが、運営が軌道に乗りましたら、将来は防災面も考えしっかりとした、かつユニークな建物を含めた環境整備に取り組まれることを期待します。施設の方針については、尊重させていただきます。
3 本市に反映できると思われる点
このようなユニークな取り組みをする施設が藤枝市にあったら、利用希望者が殺到するのではないかと想像しました。藤枝市ではリハビリ施設が不足しているというのに、ここでは通所しながら自分に合ったメニューを自分で選び、一日中これに挑戦していく。自分の能力を自分で引き出し、日常の生活に役立てようという考えを持った施設です。藤枝市の施設の職員数は不足しているので、実施は困難だと思いますが、見習うべき点が多いのではないでしょうか。
4 その他(感想、意見)
「夢のみずうみ村」という名前から、美しい環境に囲まれた施設をイメージしていたので、実物を見て驚かされました。サティアンのような倉庫を改造したような場所を中心に、いくつもの古い建物がつながっていて、中はまるで迷路のようでした。
利用者はそれぞれ自分の一日の計画を立て、実行しています。リハビリをやったり好きな物に熱中したりと、生き生きした生活をしていました。ここでは利用者に目的を持たせて生活させることを主眼としています。人間の尊厳を大切にしているのだと思いました。
このような特殊な施設なのに、職員はそう多くはいないようでした。利用者自身がボランティアをやったりしていて、施設内で使える通貨(ユーメ)を稼いで、それを自分のために使用しています。私たちの案内をしていただいた92歳の「杉山さん」も職員ではなく、利用者の一人と言うことで感心させられました。当日、私たちのために職員はほとんど出てきませんでした。杉山さんはかつて病弱だったお身体をリハビリで見事回復なさり、活躍されています。山口県の施設に出かけて、このような聡明で上品なお方に出会うとは、まったく想像していませんでした。
(文責:遠藤久仁雄)