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■平成28年度下期「健康福祉委員会」行政視察報告(委員:遠藤久仁雄)

■視察先:広島県東広島市/島根県邑南町/兵庫県尼崎市(2016.10.24〜26)
広島県東広島市役所

広島県東広島市役所

島根県邑智郡邑南町役場

島根県邑智郡邑南町役場

兵庫県尼崎市役所

兵庫県尼崎市役所


●視察先⑴:広島県東広島市
●視察テーマ:子育て・障害総合支援センター(はあとふる)について
 
 JR広島駅から山陽本線で東へ35分、広島大学をはじめとする多くの大学を抱えた学園都市です。面積は635㎢、人口は185,000人で増加中です。JR西条駅周辺には、7軒の酒蔵があり、兵庫の灘、京都の伏見と並び評されている。


1 取組の経緯・内容
 子育てに関しては、元来、育児や発達障害、虐待等の相談体制の充実・強化、子育て支援者のネットワーク化、子育て支援の交流の場の提供等が課題であった。さらに障害のある子どもの家庭では、障害の特性に応じた支援や悩みの問題を抱え、保護者の要望に対応する窓口の必要性が高まっていた。平成18年に障害者自立支援法が施行され、これらの状況と相まって、翌年の平成19年には東広島市子育て・障害総合センター「はあとふる」が設立された。
 障害者の子供さんを持つご家庭だけではなく、一般の家庭に対しても、子育て全般について何でも相談に乗ったり、情報提供してくれたり、また仲間を紹介してくれます。学校でのいじめ問題まで相談に乗ってくれています。安心して子どもを生み育てられるまち、安心して健康に暮らせる支え合いのまちを目指して、一人ひとりの人間を大事にしていこうという市の姿勢が感じられる事業となっています。


2 今後の課題
 各地域に多くの地域子育てセンターや児童館を有してはいるものの、市の面積が藤枝市の3倍強と広いため、運営面では苦労しているように感じた。
 幼児期に発達障害が見られた子どもが、就学する時及びその後の追指導に関し、効果的な情報資料の提供や関係者間の話し合いなど、こちらからの質問に対して具体例がお聞きできなかったのは残念でした。

3 本市に反映できると思われる点
 
本市でも同様の取り組みを既に行っているので、一つだけユニークな事業を紹介させていただきます。
『産後ケア事業』
 今年8月から始まった、ほやほやの事業を紹介いただきました。出産後5カ月未満の母親と赤ちゃんが対象になります。母親が安心して子育てができるように、保健師・助産師による授乳指導・育児相談などのサービスを指導提供します。毎週、火曜日〜木曜日の11時から16時まで。会場は西条駅近くの割烹ホテルで、会場費・食費・諸経費の全て込みで3,500円。市町民税非課税世帯と生活保護世帯については、利用料が免除となります。藤枝市でも検討する価値がありそうですが、どうでしょうか。


●視察先⑵:島根県邑智郡邑南町
●視察テーマ:日本一の子育て村構想について


 島根県中南部に位置し、周囲を山に囲まれた盆地で標高は100〜600mの高地。面積は419.29㎢、人口11,265人の、のどかな町である。「日本一の子育て村構想」とともに、「ここでしか味わえない食や体験」をA級グルメと定義した「A級グルメ立町」を2本柱に掲げて定住促進に取り組んでいる。

1 取組の経緯・内容
 人口減少、高齢化の中で、町の将来を真剣に考えた。平成22年4月に施行された「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律」に基づき、新たに平成22年度から27年度までの6年間を子育て村構想の計画期間として策定した。邑南町では、過疎債をソフト事業に充当できるよう陳情している。現在も高齢化率が42%と高く、人口も減少してきてはいるが、「日本一の子育て村構想」により、近年の減少率は低い数字を示している。
 様々な分野にわたり子育て村構想が展開されているが、特に「医療」「保健」「福祉」「教育」への取り組みが大きいと感じた。「医療」では、公立の邑智病院が24時間の救急受付を行っており、ドクターヘリで広島まで20分の搬送が可能です。また、小児科医・産婦人科医の常勤により、安心して出産できる医療体制を確立しています。「保健」では、中学校卒業まで医療費が無料です。予防歯科費用助成など、各種の助成もあります。「福祉」では、保育料が第2子目以降完全無料です。また、保育所では完全給食ですが、こちらも無料です。当番の子どもが楽しそうにお米を研いでいる様子が微笑ましかったです。子どもが病気の時も、就労の必要がある場合には、安心して病児保育室へ預けることができます。当然、保育所への待機児童は一人もいません。「教育」では、まず学校数が多いと思いました。この人口規模で小学校が8校・児童数487人、中学校が3校・生徒数257人です。いかに教育分野を大切にしているかが分かります。図書室の充実も見られました。また、町内に唯一存立する県立の矢上高校への通学生のため、寮の経費やバス通学定期への補助があります。その他、移住者へのケアーも手厚く、特に定住支援コーディネーターの関わりにより成果を上げています。

2 今後の課題
 意欲的な取り組みで、定住の促進を図り、出生率も高水準を保っています。若者を大事に考え、市全体で育てています。課題として考えられることは、就業の心配です。特に若い人たちが、将来この町でどんな仕事に従事できるのかという点が唯一の不安材料です。

3 本市に反映できると思われる点
 邑南町を視察させてもらって、本市の「子育てするなら・・・」のキャッチコピーが、少し恥ずかしく感じられました。邑南町では、町民の思いやりという気持ちが生活の随所に感じられました。見習いたいと思いました。


●視察先⑶:兵庫県尼崎市
●視察テーマ:子どもの育ち支援条例に基づき地域で子どもを支える仕組みについて


 兵庫県の東南端、大阪市に隣接し、市域の3分の1が海抜0メートル地帯である。、市南部地域は日本有数の工業地帯として発達した。面積50.72㎢は本市の4分の1、人口は452,571人は本市の約3倍、人口密度は本市の約12倍である。

1 取組の経緯・内容
 子どもの育ちに関する課題に対応する仕組みを盛り込んだ『尼崎市子どもの育ち支援条例』が、平成21年12月に制定された。それ以前から全国的に少子化、核家族化、価値観の多様化、地域における住民関係の希薄化等を背景にして、児童虐待、いじめ、不登校などが問題となっていた。尼崎市も例外ではなく、もともと生活保護申請者の割合が高いなど困窮者も多く、残念ながら凶悪犯罪が多く発生していた。
 この条例では、子どもの人権が尊重され、社会全体で子どもを支えるという姿勢を確認している。そのための計画策定を市に義務付け、要支援の子どもに対する支援のため関係者・各種機関が努力すべきこと、市はそのための仕組みを考えることを明記している。
 条例の趣旨を具現化するための一つが、地域社会の子育て機能向上を目指した仕組みの「子育てコミュニティソーシャルワーク」である。「子育てコミュニティワーカー」が活動の中心となり、子育て支援を行っているグループの相談に乗る、いわば「支援者の支援」を行っている。これにより地域の自主活動が活発になり、ネットワーク化に寄与することに繋がっている。
 もう一つは、要支援の子どもを支援する仕組みの「スク―ルソーシャルワーク」である。福祉事務所に「子どもの育ち支援ワーカー」を配置し、学校に出向き、ケース会議を開くなど、要支援の子どもを福祉と教育の連携体制により支援する。これにより児童虐待やネグレクトなどの家庭生活にまで踏み込んだ指導を展開することが可能になる。

2 今後の課題
 事業を中心になって推進していく「子育てコミュニティワーカー」や「子どもの育ち支援ワーカー」の資質と熱意が重要であると感じた。この両者が力を発揮する環境に置かれれば、この事業は成功していくと思われます。そのための行政側の支援に期待します。

3 本市に反映できると思われる点
  本市では、全小・中学校に多くの支援員が訪問している。この中には特別支援教  
 育専門の支援員もいて、成果を上げていると聞いている。裏を返すと、本市ではこのような支援を学校の中だけにとどめてしまっていることになっていないだろうか。もしかしたら地域の関わりが消極的なのかもしれないと、少し心配になりました。

4 その他(感想、意見)  
 未来の宝である子どもたちを、地域社会全体で関わって、大切に育てようという考えが素晴らしいと感じました。尼崎市の発展をお祈りします。

 (文責:遠藤久仁雄)